日本権力の構造(カレル・ヴァン・ウォルフレン)

 政治責任の中枢がない

 「日本の権力構造の基本的な欠陥は、政治責任の中枢がないということだ。しかし、この欠陥に診断を下し、除去する対策を立てることは、権力を握る官僚の地位を激しん脅かすことになる。日本の将来を考える上で、政治的無責任は重大な欠陥である。」
為政者あるいは、行政をつかさどる官僚は税金の使い道を組み立てる。その計画が不備であったために、例えば大きな欠損をのことてしまったとしても、日本の政治では、誰一人責任を取る者もいないし、制度としても組み立てられてはいない。つまりは、あることを実行して、失敗したところで誰もとがめられずに、税金だけが無駄に消えてしまう。 例えば税の徴収は、国民に対して厳格に実施されても、徴収された税金の使途がどうなっても責任はあいまいなままに見過ごされてしまう。すべての政治行為に貫かれている、不明瞭な無責任の体制こそが、改善されるべきである。組織上も、制度上も、そして計画から実行の段階、結果の評価の全工程を、あいまいにはしない予算を含めた緻密な計画性、国民の監視の目を協働という作業とともに加え、全工程を国民の眼にさらす情報公開の徹底と、十分に国民と対話できる意思の反映を根拠とする。つまり管制主導を全廃し、国民主導の政治体制へと価値転換することが必要だ。