実
は、私自身が、ブラック企業と呼ばれる会社に勤務していたことがあります。
こんなに話題になる前でしたので、こんなひどい会社もあるもんなんだ…と思うより先に、自分の力のなさにあきらめと無力感に苛まれ、いたたまれなくなったものです。
最近では、国際的な衣料品ブランドでもある
Uクロが、ブラック企業の代名詞みたいに有名ですが、居酒屋・ファミレス・バイキングなどの
飲食店チェーンは、古くからこの体質が濃厚で、体を壊したり、精神的に追い詰められて以後、職にもつけなくなる若者が急増しているそうです。
なぜ、飲食店にこの傾向が強いかといえば、たいていの人は食事をする時間が大体決まっていますよね。
そうすると当然、お店には暇な時間帯と、忙しい時間帯とで必要になる人員が変わってくる。
一般企業なら時間によって人員配置を頻繁に変更するなんてことは少ないですよね。
サービス業の場合、接客時間中が業務時間であり、その他の業務の時間は無視あるいは軽視される傾向が強いのです。
ですからどんな愚鈍な経営者もシフトを削って経費削減を簡単に思いつく。
この点が、この業界をブラックにしてしまう一番の要因なのです。
飲食店の場合を想像してみてください。正社員を含めて、朝仕込みの時に、厨房に5人、ホールに5人の合計10人の人員が必要だった場合、開店の時刻には厨房の仕込みは完了しているはずですから、開店と前後して、厨房の人員5人のうち2人を減らすことが可能です。今まさに営業が始まろうというときに2人減るのです。それでも厨房は冷凍食品を温めるか、すでにできているものを盛り付けるのですから何とかお店は回ります。お昼のピークを過ぎて2時を回ると、そろそろホールも1人か2人を残し、厨房も3人中2人は不要となります。夜のピークが予想される時間帯まで厨房1人、ホールは1人か2人になってしまいます。不採算店舗ではこの時間帯は店長だけが店を切り盛りするのが常のところもあります。
夜のお客が期待できないランチ中心のお店の場合、夜も人員が増えても1人か2人です。
勿論、居酒屋などの場合は昼より多くのパートが投入されます。
夜の時間帯でも22時以前に大半のパートは返してしまいます。10時を超えると深夜勤務手当を出さなければならない場合があるからです。
原則、どこのお店でも1日6時間以下、週5日以下の勤務を前提にパートのシフトを組む場合が多いようです。
ですから、万一パートが不都合、出られない場合、休日でも無給でも社員が穴埋めをすることが暗黙のルールです。
どんなに忙しくても、パートには一定の休憩時間を与えます。社員が休憩時間を取らなかったとしてもです。
特別の説明をしなくてもどうしてかはご理解いただけるでしょう。
ピークの時間帯を過ぎてファミレスなどに行くと、テーブルが全然片付いてななくて不快な思いをすること最近多くないですか?
従業員がサボっていると思った方は大きな間違えです。
この時間帯は、食器の洗浄、かたずけ、不足が見込まれる夜の食材の準備などなど枚挙に暇がないほどに裏では少ない人数で作業が行われていたりするのです。
そんな時間帯は、個人のお店なら「休憩中」などの中休みの看板を出し、夜に備えるのですが、長時間、店舗によっては24時間年中無休の営業を看板に掲げるレストランチェーンなどでは、お客が少なくなる時間に清掃やメンテナンスを行わないとならなあいため、その時間に来られたお客様が多少不便であったり、不快に思われるようなことも、気には掛けて最低限の配慮やお詫びをしてもそれ以上の余裕は正直従業員にはありません。
実のところ、特に社員は「お客様への心遣い」よりも「本社への配慮」を優先します。
口では「お客様第一」でも、内心は「会社の評価」が気になるのがこの業界の常です。
何故かと言うと、普通の会社と違い飲食店チェーンの正社員は、組織から切り離された存在で、お店の外の人たちから見ると、多くのパート社員を指揮命令する管理者ですが、本社からすると店長といえども最下層の職階で、出向社員を遇するのと何ら変わりはないのです。
数字だけが判断材料です。客観的と言えば聞こえはいいですが、店舗の実態を分析したり、考慮したりという厄介なことは考えなくてもいいので管理する側は楽なシステムです。
営業成績が優良店舗でも伸びない今日の状況で、数字だけを見て一時的に無駄(?)を除いて収支を短期的に改善する。
時間帯で人員を最低限に減らし、社員教育もマニュアル一辺倒でサービスの質はどんどん落ちる。
時給の高い経験豊富なパートは削減対象。
会社の予算、会社の通達・要求にいかに応えるかで日々精一杯で、本来向けなければならないお客様へ目を向ける余裕がないのです。
まあ、どこの企業でもそういう面はあるよ…と思われる方も多いでしょうが、
ですから中々現場で「お客様の笑顔のために…」なんてテレビドラマの店長みたいな充実感は持てなくなっているのが実情。
多くの店長は、営業部に所属し、エリアマネージャーになることが第一の目標になります。
早く、今の苦役を終えて少しでも楽ができるポジションに付きたいのが本音と言ったところです。
「ホントかよ?」とよく驚かれることですが、退職するまで私は本社に行ったことがありませんでした。
地方店舗でパートとかアルバイトで雇われたのであれば当然かもしれませんが、正社員で本社採用だったんですが、最初の赴任地は福島県の須賀川市で、採用後直接任地に赴くようにとの電話での指示を受け、研修もなくそのまま配属地へ。
現在は福島県は震災や放射線汚染の影響で、どうなっているのかさえ分かりませんが、その当時は、郡山市の隣に位置する福島空港を抱えた街ということもあり近隣からも来店者の多い繁盛店でした。何にも仕事が判らない社員がいきなり主任さんです。それでも、パートやアルバイトに仕事を教えてもらいながらなんとか半年が過ぎたころ、いきなりの転勤です。
今度は神戸のお店へ。神戸と言ってもここが本当に神戸市内なの…とビックリしてしまうくらいの奥地で、有馬温泉よりもさらに奥地の三田市と西宮市の境界線に位置する店舗でした。神戸市内に出るにも西宮へ出るにも車で1時間半くらいかかるど田舎です。近くにアウトレットモールがあるのですが道から微妙にずれているため、観光客も来ないような場所のお店でした。
「なぜこんなところにお店を出したのか?」
出店計画をした人間の無能さに文句も言いたいところですが、不採算店舗で暇なために楽ができるかといえばそうではないのです。
むしろ、パートも満足に雇えない。最初から店舗を維持できる人員がいないのです。
朝、お店へ出たら、途中で抜けるなんてことは、できないですし、病気でも、怪我でも出ないとお店が維持できないのです。
勿論、予算がないから店舗の周りや駐車場の草刈りからメンテナンスなどなども自分たちでやるしか手がなく、22時閉店でも帰宅時間は翌日零時を回らなければ帰れない。「36協定違反になるから」という会社側からの指示で、勤務時間は200時間を超えた部分はタイムカードも押してはいけない。
もちろん記録にない残業は、給与も支払われないばかりか、打刻出来ずに欠勤扱いで給与が減らされることも珍しくない。
この時抱いた疑問は「一体、私は誰の尻拭いをしているのだろうか」と言う疑問でした。
ここもわずか8か月で転勤となり、最後の最悪な店舗へ移動となるのですが、ここまでで判ったことは、
会社側は、
長く店舗に社員を置いてパートやアルバイト、周辺地域とのコミュニケーションが深まることを歓迎していない。
店舗に関する問題意識や改善のための自主的な取り組みは歓迎されない。
パートやアルバイトで厚生年金・健康保険の加入要件を満たすような場合でも本人には伝えない。
加入を希望する場合、逆にシフトを減らして収入を減少させ、他の仕事に移るように仕向ける。
などなど。
パートやアルバイトは替えが効く使い捨て
人材育成などマニュアルがあるのだから不要
社員も使いにくければ首にして使いやすい奴だけ残せばいい
的な発想が言外にあふれていました。
栃木県の那須塩原の新店舗に移動してからのことは、正直精神的な苦痛が多く、文章にしたくない。
ここまでの話は、不景気下の企業なら実はどこの会社もやっていそうなことで「この程度でブラックなら今の日本企業全体がブラックだよ」と言われかねない。
小泉改革で行った労働市場への規制緩和、日本的経営の全否定、強欲が支配するアメリカ的な経営への方向転換等など、この国の企業は、いつの間にかどの会社もブラック企業に変質せざるを得ない、そんな時代の只中に生きていることを、むしろ自覚されたい。
もはやイデオロギーの時代ではないといった政治評論家がいたが、
資本主義の到達点が、福祉国家ではないとしたら、この
強欲が支配する世界を改めるのは、マルクスが言うような
暴力革命しかないのかと不安になったりもする。別に推奨はしていないが…
ただ、従業員にとってはブラックであっても、Uクロ、U民、S太郎などの企業はお客にとっては安くて優良な企業と考えられているのだから、今のうちに経営の刷新が行えれば、企業としての崩壊はまのがれるやも知れない。
だが、今の安倍内閣では社会を改革し景気を浮上させるだけの求心力も実力も不足している感は否めない。
ちょっと話が大きく飛躍しすぎた。
