窓は開いている。

風はない。

僕は今何かを見ている。


あれはなんだろか???。

壁か?

違う。

何だ?

何を電気信号に変え、脳まで伝えているのだろうか。

いや、妄想かもしれない???。


ただ白くて平らだと言う事しか受け取れないあれはなんだろうか。

長く見つめていると本当に何かさえ想像もできなくなる。

冷たいのだろうか、暖かいのだろうか。


ただ白い。

その隣も白い。

よく見ると模様がある。

幾何学模様がある。


揺れている?

違う。

揺れてはいない。

だれかが線を加えた?。

いや、線ではない。

線だ。

違う。

じゃああれはなんだ?

あれはただの模様だ。

白の中に模様なんてない。


ヒビが入っているんだ。

割れ目がある。

今にも崩れそうだ。

割れ目などない。

あるのは模様だ。

模様???

幾何学模様?


そうか、わかった。

あれは壁だ。

そうだよ、あれは壁でしかない。


いや待て。

壁じゃない。

粘土だ。

あれは壁ではなく粘土だ。

よくもまぁ粘土でできたもんだ。

そうだ。

そうかもしれない。

粘土あれば疑問はなくなる。

粘土をみているんだ。

そうだよ。

そうに決まってる。

きっと。

???。


僕はこうして君が部屋を出た後、朝を迎えた。


窓は開いている。

風はない。

緩やかな日差しが冷たくも暖かくもなくそそいでいる。

心地が良い。



ところで、さっきからいるこいつは誰なんだろうか?
起き抜けの日差し。
南極において行かれたままの犬みたいな洗濯物。
1万年前からそこにあるかの様なティーカップ。
誰かが誰かの後を追いかける足音。
8小節ごとにしか聞こえてこないピアノの音。

僕は嗚咽するかの様にこみ上げてくる言葉を
また飲み込み風に揺られる南極の洗濯物を見つめている。

たぶん、世の中には目に見えないモノの方が多い。
きっとそうだと思う。
目の前にある手さえ掴めず、
ほんの1メートルばかりの距離でさえ埋めれない僕には
そう考える以外に手立てがない。

壁もフェンスも鉄格子も何もない1メートルばかりの
距離はとてつもなく遠い。
僕の生きてきた24年間の全てを並べたとしても届かない。

缶ビール5本を並べて1本づつ飲み干しながら近づけば
届くのかもしれない。

いや、僕が近づけたいのは距離ではない。
おそらく心と言うやつだ。
今の僕にはこんな抽象的な台詞がよく似合う。

ピカソがこの情景を絵にでもしたら、
とんでもなく小さな手がぐにゃぐにゃの何かを
掴もうと伸ばしている様な絵になるだろう。

置き手紙のみたいに口にしたさよならの挨拶は
3日経ってもまだ部屋をさまよっている。

誰かが見つけたその置き手紙にはこう付け加えられている。
『さようなら PS. But I Love U』



「よくわからないひと」




今世紀最大の疑問



目の当たりにしたような顔で




君は首を80°に傾けている




外は車が走っていて


花屋には花が運び込まれている




「何考えてるかわかんない」




君はベッドを出て


服を着ながらそうつぶやく




その疑問は答えを待っていないし


当の答えは風に吹かれて消えていく




テーブルの上では


アイスティーのグラスが汗をかききっていて


灰皿の中に死んだタバコが積み重なっている




「けど、いい人な気がする。わかんないけど」




そこから君の秒針は一瞬とまって


こっちをじっと見たあとにまたベッドに戻ってくる




怠惰な時間


どんよりとした朝


少しジャマな日差し


散らかった部屋


騒がしくなる窓の外




またこんな時間を過ごしてしまっていて


なぜか君のことを憎らしくも感じて




それでも


その何ともいえない雰囲気や仕草が


ゆっくりと心を吸い込んでいく




「君もいい人そうな気がしてる。まだ分からないけど」




僕こそ君を理解してない




なんて、くだらない会話だ




But I love you.