簡単なはずの給与業務はなぜ大変か(その2) | ものづくり企業の人事総務をワンストップで専門サポートするインディペンデント・コントラクター(IC独立業務請負人)が日頃思うこと

ものづくり企業の人事総務をワンストップで専門サポートするインディペンデント・コントラクター(IC独立業務請負人)が日頃思うこと

大手自動車会社での30年の人事総務経験を経て,2014年にIC・行政書士として独立しました。グローバル化進展の中、業務のアウトソーシング化など荒波にさらされつつある人事総務部ですが、企業活動を支える総務系業務の重要性・専門性など日頃思うところを語ります

(その1から続きます)
独立人事総務請負人(人事総務IC)の木村勝です。

前回記事で給与計算へのデータ連携の多種多様さについて触れさせて頂きました。

毎月決まったデータを連携するなら問題はないのですが、通勤手当申請などは申請者が従業員本人であり、場合によっては会社員生活で初めてという場合もあり、給与計算に必要な”正確なデータ”が連携されてくるとは限りません。

また、給与計算は給与処理システム日程に基づいて計算が回りますので、必要なデータが給与計算処理日までに連携されないと正確な給与計算が実行されないことになります。

当然のことですが、もし給与計算日までにデータ連携ができなかったらどうなるでしょうか?
一言でいうと従業員に「正確な給与を支払うことができない」ことになります。

給与計算日までに正確に遠景されない要因をみてみると
 ①社内の意思決定プロセスの遅れ(ex決裁遅れ)
 ②突発/遡り退職など「
 ③就業/人事管理上のモレ
 ④給与処理日程の見落とし
 ⑤業務サイドの確認ミス、単純連携(入力)ミス
 ⑥従業員からの申請遅れ/記入不備による承認遅れ 等々
などがあがってくるかと思います。

また、入力項目には必須項目が決まっています。また、会社によっては、統計管理データ出力のため、必須項目の選択肢が多いケースもあり、こうしたことが給与計算の複雑さを増幅しています。

給与連携に間に合わなかった場合の対応としては、
 ①本人申請の誤りや遅れにより、誤支給や支払いモレが発生したケース
   ⇒原因が本人にある
   ⇒翌月精算で対応
 ②所属長や人事部側での処理ミスによる給与修正が発生したケース
   ⇒給与修正依頼により、従業員へお詫び説明を行い、本来支払われるべき支給日に間
    に回せるように個別処理を行う
というような運用ルールで対応しているところが多いかと思います。

また、規程や基準の曖昧さや難解さも給与計算に大きな影響を与えます。

従業員サイドから見て、規程や基準の意味がわからなかったり、申請方法がわからないようなケースです。

こうしたケースはデータ確定までに問い合わせのプロセスがひと手間入ったり、申請内容エラーや内容確認に時間がかかり申請遅れにつながったりします(処理する人事部員でも判断が難しい内規と呼ばれる規程・基準があったりします)

例えば通勤手当申請で、”合理性、一般性、経済性を総合的に勘案して通勤経路を認定する”という規程のところがあるかと思いますが、新線開通などにより経路認定判断が難しいケースも増えてきています。

以上、給与計算業務の急所のような部分について記してきましたが、やはり根本の問題は、規程・基準の難解さや処理の複雑さが最大のネックです。

人事部員も複雑な処理を正確にこなすことに”美学”を感じるところがありますので、一度定着した処理を抜本から見直して、制度自体を変えるところまではなかなか意識が向きません。

規程・基準を変えるためには、組合との交渉などを経る必要があるものもありますが、運用の範囲で変更可能なものもあります。

人事部としては、人事部のチェックを極力減らし、”データを入れて計算を回してハイおしまい”というプロセスに近づけるためにも「本人申請主義」、「日割り精算の廃止」など処理の簡素化の取組みが必要です。

貴社の給与計算業務は、いかがしょうか?