~メンタルヘルスチェックの義務化法案(労働安全衛生法)の動向~ | ものづくり企業の人事総務をワンストップで専門サポートするインディペンデント・コントラクター(IC独立業務請負人)が日頃思うこと

ものづくり企業の人事総務をワンストップで専門サポートするインディペンデント・コントラクター(IC独立業務請負人)が日頃思うこと

大手自動車会社での30年の人事総務経験を経て,2014年にIC・行政書士として独立しました。グローバル化進展の中、業務のアウトソーシング化など荒波にさらされつつある人事総務部ですが、企業活動を支える総務系業務の重要性・専門性など日頃思うところを語ります

昨年2012年11月の衆議院解散により、廃案となった労働安全衛生法の
今後の動向が気になります。

今年の予算については、昨日のニュースでも報じられていた通り、29日に
平成25年度暫定予算(4/1~5/20)が成立、本予算はGW明けという
スケジュールです。

通常国会では、予算の成立が最優先とされているため、予算案成立前に
他の法案が審議されることはほとんどないのが通常ですので、動きがある
とすればGW明け以降ということになるかと思います。

この改正労働安全衛生法案の最大のポイントは、事業者に従業員へのメ
ンタルヘルスチェックを義務付けるという内容です。

強いストレスを感じている労働者を早期に発見することを目的として
(1)事業者は、医師又は保健師によるメンタルヘルスのチェックを労働者
   に受けさせる
(2)結果は直接、労働者に通知し、労働者は希望すれば産業医など医
   師の面接を受けられる
(3)事業者は、面接を希望したことを理由に労働者に不利益な扱いをして
   はならない
という内容です。

通常の健康診断に合せて年1回受けることを想定し、1人当たり平均
約350円の費用は事業者の負担とされています。

スキームとしては、2006年4月に施行された「過重労働対策(医師によ
る面接指導)」に似ています。

この改正時も企業側からは、多くの異論が出る中、どうにか改正法案が成
立しましたが、今回の改正案も現行案のままで、すんなり可決成立すると
は思えず、今後も議論が白熱しそうです。

過重労働の時は、確か「長時間残業」⇒「睡眠時間の減少」⇒「脳・心臓
疾患の発症リスク増加(文献調査上)」というロジックだったと思いますが、
メンタル判定の場合は、過重労働以上にその判定の客観性は難しいですね。

肝心のチェック方法については

「具体的にどうするかは、法案成立後に専門家らの意見を聞いて決める。
事業者が独自のやり方を考えてもらっても構わない」(労働衛生課)

とのことですが、例示されているチェック表を見た限りでは関係者が指摘
するように正確な判定?は難しそうです。

最近大手企業で導入が進んでいる外部のEAPサービス(心の健康支援プ
ログラム)でも、かなりの質問項目を設定し、本人のストレス耐性、ストレス
状況などを総合的かつ時系列的にみてようやく傾向がわかるといった感じ
だと思います。

血液検査のように具体的な数値データでは判定できないストレス状況は、
診断時の一過性の状況、気分などによりかなり結果が振られ、判定も難し
いというのが正直なところではないでしょうか。

メンタルヘルスの問題は、”自殺”や”労災認定の増加”、”精神障害者増
加⇒雇用義務化”(先日の記事です)などに直接につながる問題であり、
急務で取り組むべき重要課題であることは間違いないですが、専門家から
も修正意見ないしはその実効性を疑問視する意見が出ている現在の状況
を見ると、その成立まではもう”ひと悶着”ありそうです。

自殺者高止まり状態に対して何とかして歯止めをかけたい(2012年は
3万人を切りましたが)国の強い意欲は理解できますが、今後の活発な議
論を通じて、企業側に無駄な負担や工数を課する対策でなく、従業員サイ
ドにとって本当に実効あるメンタルヘルス対策を講じることが必要だと思い
ます。
にほんブログ村 経営ブログ 人事労務・総務へ
にほんブログ村

FC2 Blog Ranking