ゆかりあさんのブログ

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「まずは、進水日おめでとう、かな?」
「あら、ありがとうございます、提督」
12月8日、それは彼女こと、軽巡洋艦神通の進水日である。
軍を退役した後、一般人となった元提督であったが、彼女の進水日やその他の行事などでは、彼女に会いに来ていたのであった。
「雪、か。」
「雪、ですね……」
しんしんと雪が降り積もり、辺りに白銀の雪化粧を施している。
彼女もまた、雪に負けないほどの真っ白な白無垢のようである。
「やはり、いってしまったんだね……」
「申し訳ございません、提督……」
気まずい静寂が辺りを包む。
すると背後から……
「おーい、そこで何してんのさー?」
と、川内が静寂を破り、提督に声を掛けた。
「って、提督かー、提督も神通に会いに来たんだ」
「その呼び方はやめろ、大体、俺はもう提督じゃあ無くなっただろう?」
「まぁまぁいいじゃーん」
空気が変わった、というべきだろうか。
先ほどまでの陰鬱な雰囲気を、一気に吹き飛ばしてくれたのだ。
「しかしまぁ、やめたあとも提督に会いに来てもらえるなんて、神通やるじゃん、うりうり」
「ね、姉さん、やめてください!」
「妬いちゃうねー、提督にわざわざ会いに来てもらえるなんてさ」
「おいおい、こうやって川内にも会っているだろう?」
そういうと、彼女は肩を竦め、不満そうな顔になる。
「いやいや、提督は神通に会いに来るついでに私たちと会ってる訳でしょ? やっぱり妬いちゃうよねー」
「というより。俺はお前が夜戦以外のことに興味があったことに驚きなのだが……」
「て、提督、それは……」
むっ、といった表情で露骨に不満を訴えてくると、すぐに俺の頬にはビンタが飛んできていた。
「私が……私たちが……提督のことを慕っていたと思ってるの……っ!!」
下を向いてしまった彼女の足元には、ポタリと雫が落ち、地を覆う雪によって結晶化される。
涙で上擦った声になりながらも、彼女は続ける。
「神通も……那珂も、私だって……提督を慕ってたんだよ!? なのに突然やめて、私たちはどうすれば……」
「姉さん……」
永劫に思えるかのごとく長い、静寂が訪れる……
何十分と経ったのだろうか、それとも、何秒も経っていないのだろうか。
先ほどの昂ぶりは嘘かのように、照れるような笑顔に戻り言葉を続けた。
「ごめん、神通の前なのに……これじゃあ、お姉ちゃん失格だね……」
「い、いえ、姉さんは何も悪くありません……!」
「いや、私こそすまなかった、お前の気持ちも考えずに……」
風がうねりをあげ、徐々に吹雪へと変わっていく。
「ここは寒い……そうだな、神通への祝いの品を供えたら、間宮でも行くか?」
「そうだね……私も神通に、寒いだろうからってマフラー作ってきたんだった……」
祝いの品とマフラーを供えて、一度合掌してから、歩き出す。
神通、お前を失ってから、もう幾年も過ぎたが、どうやら俺らはこれから先に進めそうに無い。
お前が見たら怒るかもしれない……いや、むしろ怒ってもらいたい物だな……

『いえ、姉さんや提督に、こんなに大事に想われて……』
『この神通、幸せです……』
吹雪の風切り音が、そう聞こえた気がした