カイトとコアラ | FOR OVER

FOR OVER

~LOVE and FREE~

「ちょうどあんたみたいな赤毛だったよ」
「オレが撃ち殺したのは」
「そのコを追ってた連中が生かしたままとことん楽しむゲスだと知ってたからな」
「蟻に生まれ変わって ああ・・・同じ事繰り返してるって思ったよ」
「オレはこうなる前 人を消す仕事をしてた」
「命じられて引き金を引く」
「それ以外の時間は誰かを怒鳴ってれば良かった
誰にでも出来る仕事さ
生まれ変わっても繰り返している
バカげたサイクル」

「このコは・・・このサイクルから逃がしてやりたいと思った」
「難しい仕組みはわからない・・・ただ
このまま奴らに捕まって嬲られた挙句死んじまったら繰り返す気がした」
「辺ぴで何もなくそのかわり平穏な暮らし・・・のはずが
突然理不尽な暴力にさらされて死ぬ人生 そんなサイクルを」

「逃げてくれって祈りながら撃った」
「オレがそんな事をしなくとも女王は何百って人間を喰い
その中で前世をもって生まれ変わった者はわずかだ」
「ほとんどの人間の魂は無事どこかへ逃げれたのかもしれない」
「でもオレはやりたかった
積極的に逃げる手助けをした気になりたかった」
「あんたがあのコの代わりにそこに入ったってことは
あのコは多分逃げられたってことだろうし
幸いなことにオレはあんたに撃たれて死んだぜって前世を持つ蟻にはまだ会った事がない」

「みんな 上手く逃げてくれたんだろう」
「こうなる前は魂なんか信じちゃいなかった」
「オレは基本的にノミやハエと同価値の存在でただ生きて死ぬ
自我なんてものはそいつらより少しばかり脳が複雑になったためのバグだと思ってた」
「死んだら終わり 分解されてチリになる そしてそこら中に散らばる」
「オレはそのちっぽけな大量のツブには意味がないと思ってた
だがオレはこうしてここにいる そして繰り返される」
「全く別の姿なのにオレとして同じようなバカを繰り返してる」


「オレは考えた オレはバカだが今わかってる事を否定しないし分からない事を素通りしたくない」
「オレは死んだ 死んで分解され小さく分かれた だが そこで終わらなかった」
「オレがこのくらい小さくなったら終わりだろうと勝手に思ってた物質には
オレの想像がおよばなかった力があった」
「オレ達から見れば花粉程度のものすごく小さな物質が
オレ達の健康に影響を与える程のエネルギーを何万年何億年と出し続けることが出来る」
「さらに小さなDNAには俺達のほとんどを形成する膨大な量の情報が二重らせん状に詰まってる」

「さらに限りなく小さい 途方もなく小さいって事が
宇宙という莫大な空間を生むための条件だったりする」
「小さいという概念はそのものが発し得るエネルギーの総量とイコールではなかった」
「魂はおそらく小さいが繰り返すだけのエネルギーを持っていた」
「それじゃオレは繰り返すために生まれ変わったのか?
ここから先はわからない・・だから全てオレの感覚と想像でしかないが
繰り返しちゃ だめだとオレの中のどこかで言ってくる」

「おそらく繰り返したりやり直したりしなきゃいけないのは
生きてる内に心に与えるべき何かが足りなかったからだと思う」

「肉体だって心の踏ん切りがつかなきゃ動きは鈍いだろ
オレの場合前も今もずっとこのままでいいはずがないって考えてる
これが良くないんだと思う」
「オレは・・きっとまた繰り返す
このままでいいはずがないと思いながら選択を間違ったからな」


「オレがほんとうに撃つべきだったのは少女じゃなく追って来た連中だった!!」
「なんてことはない 一番のゲスはオレだって話だ」
「すすけた魂を浄化するための代償があまりに痛そうだったからそれを避けたんだ」
「逃げてくれなんて虫のいい事を祈りながら自分が傷つくまいと必死だったんだ」
「オレは自分を守るため彼女を撃った」
「そして姿だけ似てるアンタに懺悔することでまた自分だけ救われようとしている」
「全く・・・救えない話さ 最後まで聞いてくれて感謝する」


カイト
「待てよ 逃げるな」
「お前はあたちと来い お前が撃ったあたちのそばで
これからずっとだ これからずっとこれしかないって生き方をするんだ」

「これはお前の義務だ 選択の余地なんか無い」
「自らしんでリセットなんて誰が許すか 毎日あたちに謝りながら生きろ」
「二度とこのままでいいのかなんてヒマでクソな考えがもたげない位こき使ってやる」
「あたちに謝りながらあたちの言う通り働いてあたちのために生きるんだ」

「もしお前がちょっとでも今の覚悟を忘れて堕落したらあたちが殺してやる
安心して生きろ」

カイト!お客さんだよ

カイト
「通してくれ」
カイトとコアラの前にゴンが現れた。
ゴンとカイトの会話
「・・・カイト・・・?」
「ああ」
「・・・・ごめん・・・!」
「来い 座れ」
ゴンに顔を近づけるカイト。
「何にだ?」
「いっしょに戦えなかった」
「力が足りなかった」
「でも・・・次はオレがカイトを護るよ」

「ピトーを倒すのに大分ムチャしたらしいな」
「うん 死にかけた」
「それでもお前がオレの倒せなかった敵を倒したのは事実だ
オレの目に狂いは無かったと負け惜しみを言っとくか」
「・・・でも キルアが・・皆がいなかったらオレはここにいなかった」
「オレ一人でここに来れたわけじゃないんだ」
「お互い修行が足りなかったな」
少しほほ笑むカイト。
「ジンさんと会ったそうだな」
「! ジンと話したの?」
「ああ」
「早く戻ってやれ」
「お前が言いたい事は分かった」
「わざわざ来てくれて嬉しいよ」
「助けが要る時は必ずお前に連絡する キルアにもよろしくな」
「オレ達はもう仲間だ」
「だから今はジンさんのとこへ帰れ」
「・・・・うん!!」
屋敷の前でお別れをするゴンとカイトとコアラ。

コアラ「悪かった…」
カイト「何にだ?」
コアラ「…楽になりたくて全てから逃げようとしていた。苦しくても生きてみるよ。精一杯やったと死ぬ時に思えるように」



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