私が学校に行くときの日課がある。それは1日1本は撮り鉄をすること。
特にあまり撮れる機会の少ないものを撮ることが多い。
しかし最近撮れなくなっている。札幌ー稚内を1日1往復する特急「宗谷」は
早起きしないと撮ることができない。いつも乗ってるJRで札幌駅に着いたら同時に出発している。
それは私がもう1便早いJRに乗ればいい。しかしここからが問題なのだ。
火曜日から木曜日は2時間目から授業だが、9時半前には大学に着くようにしている。
その日のJRが入るホームの反対側にはニセコライナーで731系と協調運転をしていた思い出の201系。
しかし私がホームに降り立つと同時に201系は動いてしまう。
そして私は固まる。まるで最終列車を逃したかのように。
もう一つは札幌ー室蘭を結ぶ特急「すずらん」である。
私が帰るころにはすずらんが1本ある。それで1本賭けに行く。言ってしまえばあれだが
785系目当てである。かつては旭川にも走っていた特急列車だが、今となってはすずらんのみ。
それもカムイで使われている789系と併用されていることから「次に引退するのは785系なのではないか」
そう予測を立てたのが追い始めたきっかけだ。4月はよく撮れた。ほぼ毎日撮れた。しかし5月になると
4月のツケが回ったのか、中々お目にかかれない。そして今日もまた撮れることはない。
私は様々な場所で写真を撮ってきた。しかし続けられる生命線は「撮り鉄」があるからこそ続けられるし、
今の自分がある。空港という場所がありながらも、JRに嫌われるととても大きなダメージでもある。
しかし、「撮れない」ことによって「嫌われた」と思ってしまう他にダメージを受けることもある。
以下の文章は実話である。
私はある日の学校帰りに定期の区間外にある白石駅に向かった。白石からJRには乗らずに、
四季島を撮るために。千歳側のホーム端で構える。最初はなんなく撮ることができた。
むしろ順調だった。
しかし1本の電車が通り、撮った時にその流れは変わってしまう。
新千歳空港から札幌・小樽を結ぶ快速エアポート。それを撮って確認すると、ブレていた。
いつもの設定のはずなのに。思わずカメラの液晶を確認する。しかし設定はいつも通り。
流し撮りなどしない、私が言う「デフォルト」になっていた。その後も快速便に苦戦を強いられ、そして四季島がやってくる。四季島がやってくると、近くにいた少年が激しく喜ぶ。それをよそにカメラを向ける。
しかしここで緊急事態が発生した。
ピントが合わない。そしてピンボケに全てを狂わされた。そう、四季島を映した写真はことごとく失敗に終わっていた。私はその場で絶望した。「今まで上手くいってたのに、なんで今、四季島の時に限って・・・」そう思った。
四季島のために410円かけたのに。これでは行った意味がない。私は駅構内のベンチで頭を抱えた。
「俺の才能ってホントはないんじゃないか・・・」
「俺の才能なんて借り物なんじゃないか・・・」
「俺は本当は写真の才能なんて微塵もないんじゃないか・・・」
そう思った。そして帰路につくも頭から離れない。家に着いても元気が湧かない。
「もうしばらく撮り鉄どころかカメラから少し離れようかな」とまで思ってしまう。
そして無意識にある人に尋ねる。そのある人とは私の彼女である。
「俺って写真の才能あると思う?」そう聞くと彼女はこう返した。
「写真の才能あるよ。うちはN(私)の写真好きだし。でも失敗は誰にでもあるよ。
四季島で大失敗したのはたしかにNにとってはとてもショックなのは分かるよ。
でもその反省を生かして次撮ればいいじゃん」
この一言に救われた。この一言で、写真を撮り続けようと思えた。
しかし、それ以降四季島を撮る意欲がなくなっていた。
その代わりに彼女を大切にしようと固く誓った。
調子というものは才能があっても波がある。
調子がいい時もあれば悪い時もある。
そんなことを思い、今日もまたどこかで写真を撮る