横山×北原+宮澤
「あ、来た。北原さーん!」
まるで少年のようなキラキラした顔で
横山が走り寄ってきた。
「おはよー。朝から元気だねぇ横山は。」
「えへへ、実は北原さんに見せたいものがあって。」
「えー、なになに?」
「じゃん!これです!」
後ろに回していた両手をわたしの前に差し出す横山。
その手には少し大きめの箱が。
「ん?何か入ってんの?」
箱の中を覗き込んでみて…絶句。
「わかりますか?カエルですよ、カエル!
今朝ベランダに出てみたらいたんですよー。
ほら、可愛いでしょ?」
「 」
「って、あれ、北原さん?」
「 」
「おーい、きたは「いやぁァァァァ!!!」
建物中に響くくらいの声で叫ぶわたし。
いや、そりゃ叫ぶっしょ!カエルと急接近したんだもの!
カエルだよ!?しかもけっこうでかぁぁい!!
「…き、北原さん?なにごと?」
目をまあるくして驚く横山の顔に
ふつふつと怒りがこみ上げてくる。
「何事って、こっちのセリフでしょー!?
もーやめてよ!キモイ!横山のバカぁ!!」
もう半分泣きながら叫んで、とりあえずその場から逃走。
おぞましい記憶を消し去るかのようにひたすら走った。
「…里英ちゃん?そんな息切らして、どしたの?」
走り着いた先では我らがイケメンガールこと佐江ちゃんが
椅子に座ってジュースを飲んでいた。
わたしは息つく間もなく今あったことを全て話した。
それはもう、ものすごい勢いで。
佐江ちゃんは少し引いていたようだけど
とりあえずちゃんと聞いてくれた。そして…
「あっはっはっは!!おもしろすぎでしょ!」
と、とても楽しそうに笑った。
ちょっと!笑い事じゃないっすよ先輩!
「ふー。それにしてもカワイーね。由依は。」
「か、可愛い!?あんなことしておいて?」
「だってさー、里英ちゃんに見せたい一心で
わざわざ家から持ってきたってわけでしょ?」
「…え?」
「まぁ確かにバカだなーっとは思うけどね。
突然目の前にカエル出されちゃそりゃビックリするわ。
里英ちゃんが怒る気持ちもわかるよ。
でもさ、あの子はただ単に喜んで欲しかったんじゃないかなー。」
…言われてみれば、確かにそうだ。
横山に私を陥れたいなんて気持ちはなかったはず。
ーただ単に喜んで欲しかった…。
「…佐江ちゃんありがと!わたし横山に謝ってくる!」
「おー、頑張れ。」
さえちゃんに別れを告げ、来た道をまた走って戻る。
わたし、ほんとに馬鹿なことした。
何も悪くない横山を感情のままに怒鳴りつけてしまったんだ。
きっと怒って拗ねちゃってるだろう。
聞く耳持ってくれるかわかんないけどちゃんと謝んなきゃ。
「横山!」
部屋に戻ると、姿を確認する前にその名を呼ぶ。
「あ、北原さん。」
すると意外なことに横山はすぐわたしのもとに歩み寄ってきた。
「…あ、あれ?怒ってない…の?」
「え…いや、別に。なんでですか?」
「なんでって…わたしさっき横山に酷いこと…」
「…あー。酷いことって、さっきのアレですか?
北原さんは何も悪くないじゃないですかー。
むしろわたしのほうこそ無神経なことしてしまって…」
ごめんなさい、と言ってぺこりと頭を下げてくる。
…なんでこんなに優しいかなー。この子は。
傷ついちゃったに決まってるはずなのに…。
横山の健気さや、自分の大人気のなさに泣きたくなってくる。
でも、だめ!今はそんな場合じゃないぞ!
ちゃんとやるべきことをやんなきゃ!
今にも溢れそうな涙をグッとこらえて
下がったままの横山の頭を優しく撫でる。
「横山こそ悪くないよ。怒鳴りつけちゃってごめんね。
…でも、横山の気持ちは嬉しかった、ありがとう。」
そう伝えると、横山は嬉しそうに顔を上げて
まるで猫のようにわたしに擦り寄ってきた。
その様子がとても可愛かったためか
おぞましいカエルの記憶はきれいさっぱり消えたのでした。
結果オーライってやつだね♪