大場→横山





「やぎしゃ~ん♪久しぶりやなぁ。」


「んー。久しぶりー。」


楽屋に入ると横山とまりやがイチャついていた。


…いや、どちらかというと横山が一方的に襲っているようにも見えるな



「あいつ、ほんとに永尾のこと好きだよなぁ。」


島田がわたしに話しかけてくる。


「そうだね。」


「あたしにはそっけない態度とるくせにさ。


永尾も永尾でまんざらでもなさそうだし。


…なんか妬けるわぁ。どっちに対しても。」


「ふーん、そうかい。」


「なんだよー。美奈まで冷たくしてくんのかよぉ。」



ブツブツと愚痴をこぼしてきたので軽く受け流すと


島田は拗ねてどこかへ行ってしまった。


…ちょっと悪いことしたかな。あとで謝っとこ。



でも島田の言ったことは納得できる。


だって、わたしたち9期生がAKBに入ったばかりの頃は


わたしが由依と一番仲良かったんだよ?


同い年の島田もそうだったと思う。


なのに、急に「やぎしゃん、やぎしゃん」って。


わたしのことはもうどーでもいいんか!


さらに今ではまりやだけじゃなくて


北原さんとか宮澤さんとか、後輩にも手を出してるらしいし。



推し増しすんならわたしもいれろよー!


つーか、わたしだけをみろ!!




心の中で叫んでみて…ちょっと後悔。


あれ、これじゃ島田以下じゃん。


わたしだけをみろー!、って。


冷静になると恥ずかしくなってきた。



すると、そのタイミングで横山がこっちに向かって歩いてくる。



げっ。い、今はちょっと恥ずかしいんですけど。


目が合わないように顔を伏せて目をきつく瞑る。


どんどん近づく足音に心臓が高鳴ってきてしまう。


ーく、来る!



…と、身構えていると横山はわたしの横を通り過ぎていった。


あ、あれ?おかしいな。


横山のあとを目で追うとそこには



北原さんの姿が。



「北原さーん。おはようございまーす!」


「お、横山。おはよ~。」



耳に響く、奴の楽しそうな声。



…なに期待してんだよ、わたしは。


あーなんかめちゃくちゃ腹立つ!


あいつにも自分にも!




結局、横山とは何も話さないまま収録が始まり


収録中もせっかくとなりに横山が座っていたのに


喋るどころか顔も合わせなかった。


いや、正確に言うと


合わせたかったけど、なぜか合わせられなかった。




収録が終わり、席から立ち上がろうとすると


急に横から手を引っ張られ、体ごと持っていかれる。



「美~奈っ。」



あいつが…横山がわたしの体を抱き寄せながら、名前を呼んだ。


あまりに急だったので声も出せずにいると


横山は私の耳元で囁いた。




「…なぁ、さっき期待してたやろ。」


「なっ///」


「お、図星やな。」



や、やばいなんでバレてんの!?


焦るとともにみるみる顔が赤くなる。


横山はそんな私の顔を覗き込むと不敵に笑った。


「ふふっ。顔真っ赤やで。


ほんまかわいーな、美奈は。」


「…///」



「うち、美奈のこと大好きやで?」


「…わたしは嫌いだよ、ばーか。」



そう言うと、わたしは横山の腕からすり抜け


逃げるように走り去った。




…ホントは大好きだよ。好きに決まってんじゃん。



だから…




わたしだけをみてよ。