「才加、またマッチョになったんじゃない?」
鏡の前でボディチェックをしていると優子がニタニタと笑いながら
私の体を指差す。
いや、全くその通りなんだよ。
最近チームKの公演が多いのが原因だということもわかっている。
でもチームのキャプテンとして手を抜くわけにはいかないし。
「優子はいいよなぁ。」
「なにが?」
「無駄に筋肉つかないし、出るとこは出てるし…」
「ははっ!まぁ才加よりはね。
でもいーじゃん。みんなかっこいいって言ってるよ才加のこと」
そう言うと優子は部屋から出ていった。
確かにメンバーやファンの方たちからかっこいいと言われることは少なくない。
昔はそう言ってもらえることが素直に嬉しかったのだが
今は少し複雑な気分になってしまう自分がいる。
「乙女心ってやつなのかな。」
…らしくないなぁ。
苦笑いしながら、ふとつぶやいた。
「才加~どうした?」
次に部屋に入ってきたのは佐江だった。
「どうしたって、なにが?」
「筋肉のことで悩んでるって、優子が。」
あの野郎。早速チクリやがった。
「別に悩んでるってわけじゃないよ。…ただ」
「ただ?」
「なんか女の子っぽくないなあって。」
佐江はキョトンとした顔でわたしを見つめる。
彼女もわたしに負けないくらい、よくかっこいいと言われる。
でも彼女は可愛くもある。
可愛さも人柄も全て含めて「かっこいい」のだろう。
佐江はしばらくわたしを見つめると、何か思い出したかのように、急に携帯をいじり始めた。
「な、なに?どうした?」
「んー、ちょっと待ってて。
…あ、あった!」
戸惑うわたしに、彼女は携帯の画面を見せる。
画面には、何年も前に撮ったわたしと佐江のツーショット。
「…どういう意味?」
「この写真と今のさやか見比べてみ?
めちゃくちゃ可愛くなってるよ!」
言われるがままに鏡に映る自分と写真を順番に見る。
「確かに、今の方が女っぽい…かも。」
「でしょ~!才加はこれからもっともっと可愛くなっていくと思うよ。
だから心配しないで大丈夫。
ちゃんと可愛いんだから!」
佐江は無邪気に笑いながら、明るくこういった。
可愛い可愛いと言われ、わたしも顔がほころんできてしまった。
「お!その顔めっちゃ可愛い!」
くそっ、この天然タラシが。…でも
「佐江、ありがとうな。」
「どういたしまして!」
「あ、ちょっと待って。」
部屋から出ていこうとする彼女に、携帯を返しながらわたしはこういった。
「…佐江も、可愛くなったね。」
彼女は少し照れながらわたしの肩を小突き、部屋から出ていった。