今日、患者の家族からクレームのようなものをつけられました。

私の担当患者ではなかったんですが、看護師さんに呼ばれてお手伝いに

行ったんです。その患者さんは脳梗塞で寝たきりの方なんですが、付き添いの

ご家族がいらっしゃいました。その方は、しきりに「何でこんなことになったんだろう」

「こないだまで、あんなに元気だったのに」とつぶやいていました。ご家族にとっても

つらい状況なんだろうな、と思っていた矢先、「この病院に入った途端、元気が

なくなってきた」と言ったのです。上手く伝わるでしょうか。明らかに不信感で一杯なんです。

他に何て言っていたか覚えてないんですが、しきりに病院に対する不信感をにじませながら

独り言をつぶやいています(こちらにちゃんと聞こえる声の大きさで)

まぁ、担当患者さんではなかったし、ひょっとしたら何か誤解を招くような対応も

あったんだろうな、と流していました。って書くと冷静なようですが、心の中は

自分に火の粉が飛んでこないうちに、早く立ち去りたい気持ちで一杯です。




そんな時、いっしょにいた看護師さんがあろうことか「あ、忘れ物したんで

先生ちょっと待っててくださいね。点滴のところはそのままにしておいてください」

と言い出したんです。おいおい、何を言い出すんだ、あんたは。

戦友を敵地に残したまま、自分は母国に帰ろうっていうのかい。しかも、今まさに

敵国から集中砲火を浴びているんですよ。しかも、あなたは狙撃兵かもしれませんが

私は通信兵です、後方支援が専門ってくらい戦力になりませんよ。なぜ通信兵を

最前線に残しておくのですか・・・・・




そんな通信兵を残して、狙撃兵は母国ナースステーションへ引き上げてしまいました。


あたりはいやな空気に包まれます。漆黒よりも深い闇に包まれた中、通信兵は

身動きが取れません。一歩でも動こうものなら、敵兵に見つかってしまいそうです。




そうは言っても、味方が戻ってくるまでに、せめてこの場の環境を整えよう、


狙撃兵が仕事しやすい環境を整えようと、点滴ラインを引っ張り出して、


三方活栓を外に出した瞬間、

「ちょっと、点滴いじるなってさっきの看護師さんが言ってたじゃない!!」

「あ“ーー??」口まで出掛かりました。ちょっと声が漏れてたかも

しれません。少なくとも眉間のしわが3本は入ってました。

やはり動いてはいけなかったんです。通信兵が最前線で動くことは死を意味します。




その後、狙撃兵が戻ってきて、何事もなかったように仕事をして、何とか

戦場を離れることができました。




教訓 仲間に呼ばれても必要のない戦場に赴いてはいけない