江戸時代?
末期。
とある城下町に、さすらいの侍がいた。
彼の名は柳川京一、柳川流剣術を創った男。
彼は乱れた治安を直すべく、町を闊歩していた。
町というものは色々な店がある。
刀鍛冶屋、茶屋、ようかん屋・・・
柳川「ようかんか・・・悪くないな。」
甘いものに目が無い柳川は、甘味処を見つけるとついつい立ち寄ってしまう癖がある。
柳川「主人、ようかんを一つ頂こうか。」
主人「はい、ウチのようかんは大納言小豆を使っていて、とてもおいしいですよ。」
大納言小豆。それは小豆の中でも特に高く、甘味も柔らかい、極上の小豆である。
柳川「うまい・・・これは素晴らしい。大納言小豆と和三本の柔らかな甘味とコク、この取り合わせは素晴らしい。」
主人「ありがとうございます。分かっていただけましたか。」
柳川「近頃の甘味食いは、どうも甘味ってのをわかってねぇ。甘ければいい、そんな輩ばっかりだ。」
主人「これも時代の流れなんですかね。」
柳川「いや、本質は変わってないさ。ただ、物事に無頓着な輩が多くなっちまっただけだよ。」
その時だ。奥から怒鳴り声が聞こえた。
主人「あれはシゲじゃないか!」
柳川「シゲとは・・・?」
主人「甘味好きで、荒々しく、気にいらないと暴れるんで有名なんです・・・。」
シゲ「コラぁ!主人!うまくねぇんだよ、このようかん!」
主人「いや、しかし・・・。」
シゲ「しかしもクソもあるかぁ!全然甘くねぇじゃねえか!」
柳川「その辺にしておけ。」
シゲ「誰だ貴様は?!邪魔すっとお前からぶん殴るぞ!」
柳川「そうか・・・ならば刀を抜かせてもらおう。」
シゲ「何ぃっ?!」
柳川は、ゆっくりと刀を抜いた。
少しずつ、黒光りした刀身が見え始める・・・。
つややかで・・・しっとりと・・・何と甘そうな・・・。
シゲ「よ、ようかんじゃねえか!驚かせやがって!」
柳川「フン、貴様などようかんで十分!」
シゲ「なめやがって・・・この野郎!!」
勢いよくシゲが襲いかかってきた!
それをかわしシゲの口にようかんの刀を突きつける!
柳川「食え。」
シゲ「てっ、てめぇ・・・」
柳川「いいから食え!さもなければ、このようかんの中に仕込まれた本身にて叩き切る!」
しかたなくシゲはようかんを口に運んだ。
シゲ「う、うめぇ・・・。なぜだ?甘くねえのに・・・」
柳川「今度はこの店のようかんを食ってみろ。」
シゲ「うめえよ・・・どういう事だ?」
柳川「それは貴様のおごりから来たものだ。ただ単に甘さを平面的にとらえ、その奥にある旨みを理解しようとしなかったからだ。自分優位の考え方をしているとそうなってしまうんだ。作り手がどういう味を表現したかったのか、それを理解して愉しむ事こそが重要だ。」
シゲ「そうか・・・まだまだだな、俺も」
柳川「ずいぶん聞き分けがいいじゃないか。」
シゲ「へへっ、いろんな美味いもん食いたいからな!主人、悪かった!」
主人「いいえ、またいらっしゃって下さい。」
柳川「主人、邪魔したな。」
シゲ「おおい、待ってくれよ!礼ぐらいさせてくれよ!あ、あれ?」
柳川の姿はもうなかった。しかし、また何処かに現れるのだろう。
そう、あなたの街にも。
続く
長々とお疲れさまでした
続きは無いと思います