洋服の仕事をする以前は音楽をしていました。
自分で書いた曲を自分で歌う、シンガーソングライターってやつです。
プロダクションに所属して、CD出して、ライブして、バイトしてバイトして。
バイト・ライブ・バイト・バイト・レコーディング・バイトって感じの毎日がつづきます。
アーティストって華やかじゃない。
僕らなんか昼間にレコーディングなんか出来ないから「テンファイブ」って言って
つまり午後10時から午前5時までスタジオを借りて、眠たい声で歌って、さんざん駄目出しされて
タバコくさい部屋でエンジニアのミックスダウンを待ちます。
そうやって完成した出来たてほやほやのマスターテープを握りしめて、地下鉄で帰る。
出勤するサラリーマンの列を逆走するように、部屋に戻って泥のように眠ります。
「俺この先どうなるんだろう」そんな生活。逆転サヨナラ満塁ホームランってあるのかなって。
そして今、音楽を感じる服が好きです。作り手の声が聞こえるような物を扱いたい。歌うように服を売りたい。
綺麗事でしょうか。


