衝撃的な出会いというものはどこのどのタイミングで訪れるか本当にわからない。それは男女間に限らず、色んな人や物など全てに言えることである。

 ある週末、親友(ギター)の突然の死に打ちひしがれていた僕は、気晴らしにと心斎橋界隈の楽器屋に行った。あの辺りでよく行くのは石橋楽器と三木楽器(心斎橋&アメ村)まぁあと難波のロックインぐらい。その日も店を回って様々なタイプのギターを試奏したものの、何かしっくりこないと思っていた。やっぱりこんなもんやな。そうそういいもの(しかも安い中古で探している)は見つからん。まぁ最後にアメ村の三木楽器でビンテージのギターでも見て帰るか。と、思ってそっちに歩いていた。

 と、ビッグステップあたりでふと看板が目に入る。「KEY」。それは存在は知っていたが新品しか置いていない店のため普段あまり入らなかったのだ。しかし、その日はなぜか何かが呼んでいる気がしていた。「まさかな…」そう思い、ダメ元で階段を上って店内に入る。

 店内は予想通りの感じで、特に何ということもない。ボケ~っとゆっくり見て回っていると、なつかしい顔ぶれが目に留まる。先日首の骨骨折により他界した親友と同じ「ES335」である。しかも色まで一緒。「なつかしいな~」とまるで古き友のように(実際は一週間ほどしか離れていないが)郷愁に駆られた。それはこの店には珍しく中古品で、前の親友よりは大分歳のいった81年製で、確かにところどころ年季が入ってる感じだったが、年数にしては状態が良さそうだった。しかしそこは258,000円。前の奴より約10万高い。でも久しぶりに親友と昔話がしたいなぁ(つまり試奏のこと。全くキモくない!笑。)と思い、アンプに繋いでもらうことに。用意してくれた店員は長い髪をチリチリにしてセンターで分けた、へヴィーメタルの空気を漂わせながらも、けだるそうな一般の店員とは違い、何か職人的なオーラを発していた。僕はその店員を「匠(たくみ)」と名づけた。匠はギターを繋いでいる間も色々これにまつわったりまつわらないウンチクを語る。匠は見かけどおり只者ではなく、一時はアメリカでギター作りに携わっていたようで、やたら詳しいのである。僕はそれを聞きながら「ふ~む」と唸ることとなった。

ようやくギターが手渡される。なつかしいこの赤いフォルム。このネックの感じ。ボディーのよくわからないデカさ。なつかしい…。そして僕はおもむろにGコードを弾いた。



ジャーーン♪



…おっ!?


ジャーーーーーーーン♪


おおおおおおおおお!!!!!やばい!気持ちよすぎる!何だ、このギターは!?親友と同じ形のはずなのに、音が全然違う。そうか、これが年を経た味わいだというのか!ちくしょうめ…僕は一心に弾きじゃくった。弾きながらも匠は横から色々とアドバイスしてくれる。匠の提案で同じ形の新品とも弾き比べる。やはり一音目から全然違う。作りもパーツもそれほど変わってないのに、新品はモダンな硬い音が、中古からは古臭い人間味のある音が出る。弾けば弾くほど答えてくれる。弾けば弾くほどほしくなる。弾けば弾くほどFall in Love…

 匠は実は商売上手である。ギターの話からオブラートを一枚一枚剥がしながらマネーの話に自然と持ってくる(まぁ普通はそうなのだが)。どっぷり恋に落ちてしまった僕は、日本一周旅行、NEW革ジャンを始めとする最近の浪費生活をすっかり忘れて、聞き入る。もう少しでローン申込書の氏名欄に「坂」を書くところで、思いとどまる。やばい、一度頭を冷やそう。とりあえず、内金だけ入れて取り置きしてもらって店を出る。「はぁ~、あれほしいなぁ…。」と、歩いているといつのまにかよだれが出掛かってるのにふと気づき、あわてて拭う。「こりゃ、相当だ。」



一週間後…


僕の手元には一本のギターがある。






ES335 チェリーレッド 81年製


…買っちゃった。


 取り置き期限の最終日、僕は保険も兼ねてO方とGさんを連れてもう一度「本当にそれは必要なのか」という答えを出しに行った。一応色んな店を回って、色んなギターを弾いた。そして最後に匠の待つ「KEY」へとやってきた。前回と同じような感じに匠が対応。しかし今度は匠の提案で「防音室」でデカイ音で弾くことに。こ、これが、匠の罠なのか…負けるまい。そう思ってるとギターが渡され、鳴らしてみる。

ジャーーーーン♪

…くっ…やはりお前だ。いい音しやがる。O方にも渡してみる。最初は僕の一目惚れに懐疑的だったO方も、弾くごとに「ええなぁ!」の回数が増えてくる。もはやどちらも虜である。確かにこの音と状態の良さでこの値段はだいぶ安いのだ。ES335のファンの端くれとして身にしみて分かる。もう5年も経てば10万以上値が上がるはずである。でも今かぁ…。悩む。一心不乱に悩みまくる。ローンの計算を何回もする。しかしここ最近、家にいてふとES335の事を考えている自分によく気づく。そんな落胆の日々を過ごすくらいなら…買った方がマシだ!そしてこのギターは買っても絶対後悔することはない!よし!パパパパーン!



男の20回ローーーン!!!(ドラえもん風に)



 というわけで、今僕の手の中で気持ちいい音色を奏でてくれているのが、新しくて古い友達、ES335カラマズーです(カラマズーという街で作られた。ちなみに前のはメンフィス製)。また地獄の借金生活が始まりましたが、全く悔いはありません。いや、今はそう言い聞かせるしかありません(笑)。これから愛情を注いでいきます。実にかわゆい。僕より年上ですが..。よし、あの夕陽に向かってダッシュだ!



たったギター一本買うだけで、何だこの長さは(笑)。申し訳ない。

P.S.親友、故ES335は自宅で大切に飾ることにします。あれは思い出だらけなので。