あれは夢だったんだろうか?

今でもそう思ってしまう。この左足の重い痛みと金融論のテストの散々な結果はそれが事実であったことを如実に物語っている。しかし、あまりにも出来すぎた物語は、一種の神話的な響きを我々に残す。現実はその現実性ゆえに、時に現実としての存在をも自ら疑ってしまうのである。

でも、僕は話そう。この温かみをできるだけ君に伝えよう。僕の中で冷たく変わり果ててしまう前に。

ちょっと、パソコンの電源を切るのは待ってください(笑)!確かに冒頭がキモかったことは認めましょう。すいませんでした。一体、何の話かって?いや、別に聞いてない?そんな冷たいこと、言わずに、ね?せっかくだから聞いていってくださいよ~。それは...先週の木曜日のことです。

 木曜日。僕はその日はテストもなく、4限の補講のみであった。授業に出た後、後輩のMックにプリント数枚をコピーさせてもらい、かつ同じ授業を受けているIキン氏とHップ氏とノート等を共有するという、テスト前によく見られる一種の儀式を行っており、最後にHップの儀式が終わるまで、僕はMRのゴーリキ(=BOXの通称)で待つことにした。ゴーリキでは最近PS2の設備投資もあって、ウイイレ(ウイニング・イレブン)というサッカーゲームが空気感染系ウイルスのごとく流行っている。テスト期間もお構いなしで、みな一生懸命技術向上に励んでいる。その集中力を他に使ったら、どれだけの数の人生が救われることだろう。そうはいってもウイイレは中毒になるのだ。かくいう僕もこの前気がつけば、蒸し風呂のような暑さの中、1時間ずっと一人でシュート練習に励んでいたことがある(笑)。まぁこの日もそんな感じでいたずらに時が過ぎ、Aライちゃんの思いつきで、回転寿司に行くことになった。Aライちゃん、Mガ-、M田の4人はいつものようにワーワー言いながら寿司を食らい、デザートの不味さに文句をたれつつも、もはや常識のようにデザートの数を一つ誤魔化して、店を出る。何の変哲もない一日…のはずだった。 僕は次の日にあまりにもグレー過ぎる金融論のテストを控えていたので、早く帰って頭を抱えるつもりであった。本当は18時ごろに帰る予定が、気づけばもう21時である。再び学校に戻る。すると、MガーとAライちゃんが「今からコスモスクエアに行こう」と言い出す。詳しく聞いてみると、どうもそこにある展望台の無料チケットを持っているらしい。しかもそのチケットには【入場は21時半まで】と書いてある。どう考えても杉本町~コスモスクエア間を30分でいけるわけがない。僕はわけもわからないので、とりあえずあまり触れないようにして、M田と別れ、Mガ―・Aライちゃん・僕の3人は地下鉄あびこに向かっていった。地下鉄あびこ駅に着いたのは21:20。もはや展望台は絶望的である。そんなことは最初からわかってたのだが、事実を突きつけられた2人は「じゃあ難波で飲もう」と半分冗談交じりに話していた。僕はテストも控えているので、正直乗り気ではなかった。さすがにMガーも行くのを迷うのかと思いきや、意外にもスルっと切符を買って改札に入るではないか。この時、僕らの運命の歯車はゴトゴトと動き出したのである。

普段市大近辺でしか見ないゆえに、『地下鉄に乗るMガー』という光景は何か特別なことが起きているように見えた。本人には失礼であるが(笑)、本当にそう見えたのである。心を打つような絵画に出会った時と似ている。そう、確実に何かが起ころうとしている。しかもおもしろいことには貪欲な3人である。そんな兆しを敏感に感じ取らないわけがない。僕らは即座に「せっかくだから」的な雰囲気になり、「海を見に行こう」と決まる。行き先はもちろん大阪港だ。今から起こる面白そうなことで頭が一杯な3人に「今から行っても帰れるのか」という不安を誰ひとりとして感じ取るものはいなかった…。

 大阪港駅に着くと、一番危ない橋を渡っている僕はとりあえず帰りの電車を調べておく。23:41が終電だ。今は…22時すぎ。あれ?あと1時間ちょいしかないやん。しかも天保山までけっこう遠いし…。しかし、まぁ何とかなるかと楽観視し、コンビニで酒と花火を少し買い、海遊館の方向に向かう。懐かしい、この通り。MRerはよくご存知だと思うが、春合宿で使うフェリー乗り場への道だ。「よく、あそこのローソンで白飯と漬物買って行ったなぁ」なんて思い出しながら、観覧車の近くまでくる。どうやら、漫才コンビ・レギュラーがうざいくらい宣伝していた【わくわく宝島】というイベントはここで開かれるらしい。しかもよく見ると、明日から開催。つまり僕らは明日からの開催に身震いする会場に一足早く入場してしまったのである。「俺らが一番乗りや!」と騒ぐも、ブースは全てシャッターが閉まり、人もたまに見る警備員くらいで閑散としているのはいうまでもない。ルミナリエを100倍しょぼくしたような照明がチカチカ光る中、僕らは会場を通り抜け、サントリーミュージアム裏の海に面した岸まで来た。

 そこから見える海は何と言うか“仕切られて”いた。というのも、フェリー乗り場が近くにあるのだが、その乗り場の関係か何かわからないが、とりあえず海の沖の方まで出たコンクリの足場が近くの海を囲って、ちょうど池のようになっているのである。従って、そんな波さえ立たず足場の向こうも見えない海からは、「海の壮大さ」「母なる海」「僕はちっぽけな存在だ」「あの水平線の向こうに僕らの未来があるんだ」といった海に対しての一般的な感慨深さは感じられるはずもなく、どちらかといえば「姉さん、僕らの未来は結局ここまでのようで…」「遠慮していこうぜ。」的な後ろ向きな感を抱かせた。こんなに内向きな海は初めてである。さすがは大阪港。不要な夢は抱かせず、現実をきちんと教えてくれる。僕らはそんな海を前にして階段に座り、いそいそと酒を取り出し、飲み始める。

(さぁ、どうなってしまうの?次回へ続く...)