今日(日付では昨日)はご存知の通り、バレンタインデーである。クリスマスと今日は世界中でキリスト教が無駄に恨まれる日でもある。別に『恋人の日』として決めたわけではなかろうに、独り身からは「俺はどうしたらいいんだ」とよく分からない不満をぶつけられ、カップルや家族からは「金がかかる」だのブーブー文句を言われるところを見ると、神様というのはなかなか損な役回りだなぁと、つい同情してしまうのである。

そういう僕も、結局は現代にバビョーンと生きる人間の一人なので、バレンタインデーには色んな思い出がある。その中で、今日はその中の一つ出来事について書こうかな、と思う次第である。でも恥ずかしいので、くれぐれもお父さんお母さんには内緒やで!


『傲慢 少女の純真 返らないチョコレート』

 それは小学校の低学年の時に遡る。当時、僕は単純で調子乗りで繊細で気難しい、つまりどこにでもいる小学生だった。特徴といえば、他の子より少しテストの点を取ることに長けていたのと、他の子より少し手先が不器用であった点ぐらいであろう。しかし、幸運なことにそんな個性の乏しい僕にも好意を抱いてくれる女の子がいたのである。あゆみちゃんだった。あゆみちゃんは、私の記憶が確かならば(←なつかしいね)、少しウェーブのかかったショートヘアーに、くりっとした目をしていて背も少し高く、幾分か外人っぽかった気がする。 そのあゆみちゃんはバレンタインデーになると、わざわざ家までチョコを持ってきてくれていた。最初はびっくりだった。そこまで遊んだ覚えはないのに、いきなりチョコを持って家まで来てくれたからである。恥ずかしそうに「…はい、これ。」とチョコを渡すあの時のあゆみちゃんの姿を今でも思い出すことができる。あぁ、ええ時代やった…。と、悦に入るのもこれぐらいにして(笑)、そんな感じで仲良くもなり、1年目、2年目と幸せな時が過ぎていった。

 しかし、3年生(4年生ん時かもしれんが)になった時に、事件は起こった。実は、今まで僕がチョコをもらった時には当時僕と仲が良かったN君も同じくあゆみちゃんからチョコをもらっていた。そして、バレンタインデーの当日、N君と今年は何個もらえるか勝負しようというような話をしていた。すると、N君は「僕は『今年はあゆみちゃんからはもらわん』ってゆっといた」と言った。そこに何の悪意も感じられなかったとこからみると、たぶん単なる見栄のつもりだったんだろう。でもそう来られると、僕としても何とか太刀打ちしなければならない。そして、「じゃあ、僕ももらわん」と言ってしまったのだ。

 そう言い終わった時に、言い知れぬ不安が僕の頭をよぎった。しかし、2年も連続でチョコをもらえている僕が今年もらえないわけがない。クラスも変わったし、今好きなのは違う子やし、あゆみちゃんのんぐらいいいや。と、最低な男を代表するような判断ですり抜けてしまった。「じゃあ、今言っといた方がええで。」とN君に促された僕は、断るにも断れず「おう」と了解して、言われるままに教室にいるあゆみちゃんのもとに向かった。

呼びかけると、あゆみちゃんは笑顔で振り返った。

       「えっと…」

       「何?」


なかなか切り出せないまま、時間だけが過ぎていき、このままじゃいかん、たぶん軽いノリでサラッといけるだろうと勘違いして、ついに切り出した。


       「あの…今年はチョコええからね!」

       「…えっ。」


あゆみちゃんはその周りの空間だけ時が止まったように固まった。そして、顔がだんだんクシャクシャとなっていき目に涙が溜まり、ついには机に突っ伏して泣き出してしまった。僕とN君は、軽く受諾されるものとタカをくくっていたが、予想外の展開にどうしようもなく、二人で「…じゃあ。」と逃げるように教室を出て行ってしまった。放課後、家で待てども待てどもあゆみちゃんが来ることはもちろんなく、結局その年は誰にももらえずに晩飯を迎えた。

 翌日、案の定N君と勝負の結果の話になった。N君は「今年は5個やったわ~。」と不満げに言った。確かにN君はその可愛らしさから少々モテたのである。僕は驚いたが、くやしかったので、ついてはいけないウソをついてしまった。


「僕は3個。負けたわ~。」


何という、情けなさであろう。自分でも少し泣きそうになった。でも、恥をさらすわけにはいかなかった。まことにくだらない男だった。

 その後、何度かあゆみちゃんに謝ろうと思ったものの、やはり顔を合わせづらく、向こうも少し敬遠気味になってしまい、クラスが離れたこともあって、全然喋らなくなってしまった。もちろん、バレンタインデーにもチョコをもらうことはなく、「もしかしたら、万が一…」という期待を胸に抱いては、無残に打ち崩され、失意のうちに晩飯を口に放り込む、という図式が卒業まで繰り返されることとなった。6年生の時に少し喋る機会があったものの、もうその時にはしがらみはお互いの心の奥に仕舞われており、上辺だけのトークであった。

 今でもバレンタインデーが来ると、あゆみちゃんのことを時々思い出す。そして、自分の傲慢さが招いたあゆみちゃんの純粋さに対するひどい仕打ちを悔いるのである。もし、奇跡的に何かの拍子にこのブログを観てくれてるかもしれない、あゆみちゃんにこの場を借りて謝りたい。


ほんまにごめんなさい。そして、いつもチョコありがとう。m(_ _)m