今日は、「採卵周期開始しようとしたが、いつもより月経中の小卵胞数が少ない」時にどうしたらよいのかについてお話してみようと思います。

 

こうした状況は、実は結構あります。もともと、月経中の小卵胞数カウントは、好不調があるものです。先々月は左右合計3個だったけど先月は6個、今月は2個、なんてことは全然普通にあり得ることです。よく理由を聞かれるのですが、明確な回答はなかなか出しにくいものです。

 

こうした場合、対策は3択であり、「今までの状況を見て今月だけ不調のように見える場合は、今月はやめて1周期休んで来月にする」「卵胞が少なくてもホルモン値が許容内なら採卵周期に入ることを強行する」「遅延法で卵胞が増えることを期待する」です。(遅延スタート法についてはこちら→遅延スタート法) 

 

「卵胞が少なくてもホルモン値が許容内なら採卵周期に入ることを強行する」場合、卵胞数を考慮して刺激を今までよりも増減させてみることも一法です。数が少ないからその分刺激を少なめに、とする場合と、数が少ないからこそスパルタでガンガン刺激をという場合とあります。どちらが向いているかは個人差・結果論ですが、迷う場合は、前者(数が少ない場合は刺激を少なくする)を選択します。

 

遅延スタート法については、遅延を実施してもなお卵胞が増えなければその時点でキャンセルして1周期休むことにすることもできるので、最初からあきらめず、遅延スタート法くらいはトライしても悪くありません。遅延スタート法は、受精や胚発生にも有利になることもあり、あまりデメリットがないことも特長です。

 

ピルで卵巣を休ませるとか、カウフマン療法でということを推奨する医師もいますが、そもそも黄体ホルモンが入った薬を使うと見かけ上ホルモン値が改善することはあっても、月経中の小卵胞数カウント数も採卵数も若干減少傾向となりますので、自然周期や低刺激(中刺激)で、あまり卵胞数を目指さない場合はそれでもよいですが、少しでも多くの卵胞を採りたい局面では得策ではないです。

 

 

また、書きにくいのですが月経中の小卵胞数カウントが好不調によるものではなく急激な卵巣機能低下が原因だったり、以前より卵胞が減ったといっても以前が偶発的な絶好調(マグレ)で卵胞が多かっただけ、ということも現実問題としてはあり得ます。そうした状況があるのかどうかを正確に見極めるのは難しいことですが、不調が続く場合、いつまで好調周期を待つか、どこで割り切って採卵周期に入ってしまうかの見極めはどこかでしなければならないこともあります。

 

 

一方、開き直るようで恐縮ですが、そもそも、月経中の小卵胞数カウントは誤差が大きいものです。もちろん、似ても似つかぬ数になることはあまりありませんが、同じ方を少し時間を空けて2回エコーをして同じカウントにできる自信は全くありません。

 

そもそも卵巣は立体であり、またお腹の位置関係も立ったり座ったりで変化します。あくまでも「超音波」なので、機械から遠いものほど見えにくく、近いものほど見えやすくなります。さっきまで膣壁の近くのあった卵巣が、少し体の奥に潜り込めば、色調も形も角度も異なって見えます。一定以上の大きさの卵胞は誤差は出にくいが、小さなものであれば、より誤差が生じやすくなります。また、エコーの機械の設定自体にも設定があります(スマホのカメラにも色調や明暗などの設定ができるのと同じです)。設定は直前の患者さんの状況等により常に変化しますので、これによっても数は多少は変化してしまいます。

 

もちろん、こうしたことがあるのは分かっていますので、私たちも、できるだけこうした測定誤差が出ないよう、十分注意してカウントするよう努めていますが、特に月経中のカウント数は、そこまで厳密なものとは言い切れませんので、そのあたりはご理解いただけたらと思います。

 

 

卵胞が多少少なくても、ホルモン値が良いから今月採卵してみてはどうでしょうか、なんて医師は言いがちですが、治療には精神的身体的経済的負担が生じ、できるだけ良い周期で治療したいと思うのはもちろん当然の気持ちです。一方で、いい周期を狙いすぎて時間がばかりたってしまった方も私たちはたくさん見てきています。一見ハズレに見える周期で採れた卵子で妊娠出産に至る方も実際にはおられますので、卵胞が少ないからといって、一概にその周期はダメとも言い切れません。難しいものですね。

 

私たち医師は、こうしたことを踏まえて、卵胞数やホルモン値を見ながら、「今月どうしようかな~」と思いながら皆様を診察室に呼び入れております。疑問点や希望があれば、何なりと医師にご相談いただければと思います。

 

ということで、今日は、「採卵周期開始しようとしたが、いつもより月経中の小卵胞数が少ない」時にどうしたらよいかについて考えてみました。では、今日はこの辺で。