みなさんこんばんは。今日は、「産婦人科医とは」についてお話ししたいと思います。

 

産婦人科領域は、まさに「ゆりかごから墓場まで」と言われており、おもに周産期(産科)、腫瘍(卵巣癌や子宮癌等)、更年期・思春期などの一般婦人科、そして生殖医療などの分野に分かれます。

周産期(産科)では妊娠中のことや、出産前後が中心となります。主には12週未満は婦人科、それ以降を産科、と分けていることが多いように思います。産婦人科医は妊婦さんだけ診ていればよいわけではなく、産まれたばかりの新生児のことも分からなければ産科医は務まりません。出産の現場に小児科の先生がいるとは限らないからです。専門的なことは別としても、生まれたベビーのとりあえずの診察、具合が悪い時に応急処置をして小児科に受け継ぐまでつなぐのも産科医の重要な任務です。地方や小規模病院だと、ベビーの産後一カ月検診も産科医の仕事というところもあります。

 

腫瘍は、簡単な手術もありますが、産婦人科というイメージとはかけ離れた、緻密かつ長時間の手術もあり、それに伴う全身管理は外科系そのものです。それに加えて、化学療法(いわゆる抗がん剤)や放射線療法などの計画立案、治療提供まで婦人科腫瘍専門医のお仕事です(放射線療法は、放射線科のお世話にもなります)。

 

更年期や思春期については、医学的な難しさは他領域に比べると少ないものの、思春期は非常に気を遣う分野であり、無月経、半陰陽、若すぎたり望まぬ妊娠など、極めてデリケートな分野であり、更年期医療についても、女性は更年期となると、動脈硬化や骨粗鬆症、更年期うつ、家庭環境の変化など、様々な心身の変化に晒されますので、医学的なフォローはどの産婦人科医師もできなければなりませんが、向き不向きが大きいのではないかと思います。

これらの周産期、腫瘍、思春期・更年期については、どの程度深く関わったかどうかを別にすれば、多くの産婦人科医はある程度の経験を積んでいるものです。しかし、生殖医療は、大病院でも、特定の医師のみが実施していたり、そもそも規模が大きな病院でも生殖医療は実施していない(していても高度生殖医療=体外受精は実施していない)病院も多いですので、産婦人科医の中でも採卵や移植の様子を見たことがない、という医師もおられると考えられ、少し特殊というか専門性が高い分野になります。

そして、周産期、腫瘍、思春期・更年期の3分野は、それぞれ各分野で比較的完結しますが、生殖医療は、他の分野とのかかわりが強い分野です。第一に、妊娠後には周産期(産科)とのかかわりが不可欠であり、生殖医療専門医とて、周産期の現場の知識や経験は不可欠です。また、不妊治療中に癌が発見されたり、子宮や卵巣腫瘍治療後に妊娠を希望される方、産婦人科医以外の分野で悪性腫瘍の手術や化学療法・放射線療法を必要とする方、急性白血病が分かり、緊急で卵子凍結をして将来の妊娠に備える必要がある方もおられます。若年で白血病が分かったような場合は、思春期外来のような対応を求められます。一方、不妊治療を行っている方々の中には更年期とオーバーラップする年齢の方もおり、こういった方のヘルスケア(動脈硬化、子宮がん検診、骨粗鬆症、更年期うつ等)も本来は対応が必要です。このように、生殖医療においては、ただ不妊治療を提供すればいいわけではなく、他分野と深いかかわりがあり、様々な知識と経験が必要とされるのです。

 

想像つかないと思いますが、筆者ペンギンも、病棟勤務で悪性腫瘍の治療にかかわり、長時間の手術に参加したり、NICU併設の周産期センターでハイリスク妊娠を一手に引き受け、産科救急で超緊急帝王切開をしたり、ベビーを診察したり、あるいは思春期や更年期の外来を担当していたものです。当院の生殖医療専門医も、他院の医師もそういったバックグラウンドのもとに生殖医療に従事しています。また当院には非常勤の医師も勤務しておりますが、こういった先生方に生殖医療以外の分野について最新の知見を教えていただいたり、何かあった時に連携していただいたりと、非常に大切な存在です。

 

というわけで、今日は、産婦人科医について語ってみました。

次回もお楽しみに!

 

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