『SWITCH SPECIAL ISSUE 白鵬翔』~取材期間約300日にわたる渾身のドキュメント

 
一敗照ノ富士、御嶽海、二敗阿炎――で迎えた十二日目。
(写真は全てNHKテレビの画面を撮影したものです)

御嶽海-阿武咲

阿武咲、頭で当たり、ノド輪で御嶽海を起こし、御嶽海が反撃しようとするはなを引き落とし。御嶽海はバッタリ落ちる。

控えにいたとき、一番前の相撲で大栄翔に押し出された千代翔馬が土俵から落ちてきて、少し足を気にする仕草を見せた。痛めたわけではないにしても、土俵に集中するため、余計なことは極力しないできた今場所の御嶽海にとって、この取組直前のハプニング・・・と言えばハプニングで、精神状態に影響を与えたかも知れない。

足を気にする御嶽海 千代翔馬も気遣う

もちろん力士が落ちてくるのは、よく見られる光景で、言い訳にはならないということにはなろうし、それで足を痛めたということでなかったのなら、すぐに切り換えて集中しなければならないのは確か。とはいえ、控え力士だけではなく、観客の安全のためにも、土俵周辺のスペースを広げるわけにはいかないのだろうか。転落する力士自身が、観客の持ち物に当たったり、避けようとしたりして負傷する例もある。古くからの伝統だから変えられないというものではないと思う。それを大胆に変えてきたのも相撲界の歴史だ。昔の人は四本柱がなくなるなどとは思ってもみなかっただろう。

 

余談が長くなったが、次の一番。

阿炎-隆の勝

阿炎にとっては先場所、千秋楽、あっさり負けている相手。この日は例によってもろ手突きから、突っ張りつつ、二度に渡って頭で当たるぶちかましを見せ、隆の勝を圧倒。

 

途中 頭で当たる阿炎

NHK大相撲中継、解説の北の富士さん「途中で、頭で当たったのが大きかったね。これは、なかなかできないと思いますよ。ましてや、こんな長身の力士が、突き放して、再度、頭で当たるというのは。こんな難しいことをやって・・・実にいいことを身に付けましたね」

 

阿炎は二敗を堅持。

 

『関取になれなかった男たち』佐々木一郎著

照ノ富士-明生

立ち合い、明生は頭であたってノド輪。照ノ富士が、すぐさま押し返して反撃に転ずると、明生は下がりつつ、肩透かしを引く。たたらを踏んだ照ノ富士は土俵を飛び出した。

実況・藤井アナ、北の富士さん、向正面・佐渡ケ嶽親方、三人とも「ちょっと攻め急いだのでは」という見方で一致した。確かに、いつものように捕まえてからじっくり構えれば、落とす相撲ではなかったろうか。この人の場合は、押し込まれるよりも、こういう時の方が危ういのかも知れない。

 

明生の当たりも良かった。昨日の相撲中継解説の間垣親方(元白鵬)が、明生の立ち合いは腰が十分に割れていないと指摘していたが、今日はその点、しっかり構えて立った。

一敗の二人が揃って敗れた。こうなると優勝戦線に阿炎が急浮上してくる。明日は御嶽海-阿炎の直接対決。照ノ富士が二日続けて負けるというのも考えにくいが、今日の相撲で、土俵を飛び出した勢いで土俵下に飛び降りた際、やや膝に衝撃があったようだった。やや時間を置いて立ち上がり、そのあとも膝を気にしている風だった。いよいよもって予断を許さない。

 * * * * * * *

ところで今日は、お馴染みのNHK藤井康生アナウンサーが、退職を控えて、最後の大相撲実況の日。アナウンサーが自分でそれを言うことはないが、北の富士さんが「藤井さん、今日が最後なの?」「藤井さんのおかげで、ずいぶん話を盛ってもらって、つまらん話を面白くしてもらいました」と労った。

 

今日の二人の話では、北の富士の竹澤勝昭少年が、力士になるため上京して上野駅に降り立ったくらいの時間に、藤井アナが岡山県で誕生していたとのこと。「奇遇で・・・」と北の富士さん。

 

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