芥川龍之介全集〈第2巻〉偸盗 或日の大石蔵之助/芥川 龍之介

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【著者】芥川龍之介
【対象年齢】小学校高学年・中学生・高校生
今回取りあげる話は、ちょっとユーモラスな話です。
芥川龍之介は、西洋文化に関連した作品もいくつか書いています。
中でもこの作品は、幅広い年齢層が読める物語でしょう。

【あらすじ】
天文十八年、宣教師フランシス・ザヴィエルと一緒に
伊留満(修道士)に化けた悪魔が日本にやって来た。
キリスト教徒が少ない日本でひまを持て余した悪魔は、煙草の栽培を始める。
あるとき、通りかかった牛商人が煙草に興味を持ち、何の作物なのかを悪魔にたずねた。
牛商人がキリシタンであることを知った悪魔は、
畑の作物の名前を当てたら牛商人に譲る替わりに
当てられなかったときは、牛商人の体と魂を手に入れるという契約を交わす。
困った牛商人は、一計を案じ、悪魔の口から畑に植えられた作物が煙草であることを知り、
勝負に勝つのであった。

【働く悪魔】
この作品に登場する悪魔は、誘惑する相手のキリスト教徒の少ない日本に来てしまうなど、
悪魔ながらどこか間が抜けています。
物語の題材としてはよく使われる悪魔ですが、
この作品のように額に汗して畑仕事をするという描写は、なかなか見られないでしょう。

この畑仕事のくだりで、イワンの妹にしかられたという一文が出てきます。
あのトルストイの「イワンのばか」のエピソードのことです。
大正の時代には既にトルストイの作品が日本に持ち込まれ、読まれていたわけですね。

【善と悪は同じ船でやって来る】
牛商人は悪魔との勝負に勝ち、煙草畑を手に入れるのですが、
ここで語り手は、悪魔は本当に負けたのかと問い掛けます。
牛商人の体と魂は手に入らなかったものの、その後、煙草は日本全国に広まったからです。
物語冒頭にもこんな文があります。

 南蛮の神が渡来すると同時に、南蛮の悪魔が渡来するということは、
 ――西洋の善が輸入されると同時に、西洋の悪が輸入されるということは、
 至極、当然のことだからである。

明治以降の西洋化の熱が一段落し、社会の矛盾が明かになりつつあった
そんな大正という時代がこの物語を産んだのかもしれません。