カイロ団長 洞熊学校を卒業した三人 (ますむら版宮沢賢治童話集)/ますむら ひろし

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【著者】宮沢賢治
【対象年齢】全年齢

宮沢賢治という人は、童話作家、詩人、農業指導者などいろいろな活動をしていたのですが、
教師として農学校に勤めていたこともあります。
そのためか、彼の童話には人生の教訓が結構ストレートにかかれている話が多いです。
このカイロ団長も例外ではありません。

以下は読書のポイント

【ぼったくりバー】
あるところに庭作りを仕事としている30匹のあまがえるがいました。
いつものように仕事を終えて帰る途中で、ウイスキーを飲ませてくれるという店を見つけます。
物珍しさからウイスキーを飲んでみたあまがえるたちはすっかり気に入り、
酔いつぶれるまで飲んでしまいます。
目が覚めてみると、店主のとのさまがえるは1人数百杯単位のお勘定を払えと言ってきました。
そんな大金を持っていないあまがえるたちは、仕方なくとのさまがえるの下で働くことを
約束させられるのでした。

酒で酔い潰して相手を罠にはめるというのは古典的なやり方です。
初めて読んだ子どもの頃は、カエルたちが本当に
1人数百杯のウイスキーを飲んだと思っていたのですが、
大人になってみて、これがいわゆるぼったくりバーであったのだと気づきました。
この手の話は今も昔も変わらないのでしょう。
最近の風潮だと、子供向けの物語にこんな話はいらないんじゃないかと思う人もいるかもしれませんが、
赤ずきんしかり、子供向けの物語に大人になったときのための教訓を込めることは
洋の東西を問わず行われています。

【仕事とノルマ】
さて、あまがえるたちは、カイロ団と名づけられたグループで、
団長のとのさまがえるの下で働くことになりました。
さっそく仕事にノルマが課せられます。
今日は木を千本、次の日は1人あたり種を一万粒、その次は1人あたり石を九百貫。
それまでは楽しく仕事をしていたあまがえる達でしたが、
これによって楽しかった仕事は苦痛に変わってしまうのでした。

これまたよくある話です。
珍しく勉強をやる気になったと思ったら、親から勉強しろと口うるさく言われてげんなりする
といった経験は、身に覚えがある人も多いのではないでしょうか。
本来ノルマというものは、利益を上げるための目標ではありますが、
カイロ団長のやり方はちょっと無茶すぎます。
あまり無茶な目標を設定するとかえって能率は下がるし、仕事の依頼も来ないのに
重労働をさせるのですから。

【因果応報、しかし…】
九百貫の石というノルマに、とうとうあまがえるたちはギブアップしてしまいました。
カイロ団長は怒るのですが、そのとき王様の命令が発表されます。
「人に物をいいつけるには、相手と自分の目方に比例した量の仕事を自分でやってみせなければいけない」
カイロ団長は九千貫の石を運ぶことになってしまいます。
あまがえるの10倍の目方がある大きな団長ですが、さすがに九千貫の石は運べず、
のびてしまうのでした。

この次の場面の文章はなかなかの名文だと思います。

 あまがえるは思わずどっと笑い出しました。
 がどういうわけかそれから急にしいんとなってしまいました。
 みなさん、この時のさびしいことといったら私はとても口でいえません。
 みなさんはおわかりですか。
 ドッといっしょに人をあざけり笑って
 それからにわかにしいんとなった時のこのさびしいことです。

いやなやつがひどい目にあって、うっぷんが晴れると確かにすっきりします。
でもそれは一瞬だけのことで、結局、現実の問題は何一つ解決していないままです。
そして、こういった空しさを味わって、はじめて人々は問題解決に向けて動き出すものです。
しかし、テレビやその他メディアの「その場かぎりの言葉」が飛び交う現在では、
うっぷんが晴れたらそれっきりになっていることも多いのではないでしょうか。
空しさを味わうひまも無い現在では、いろいろな問題が置き去りになっているようです。
カイロ団長とあまがえるたちは、この後、もう一つの王様の命令によって救われます。
それがどのような命令なのかは、ぜひ読んでみてください。