羅生門・鼻・芋粥 (角川文庫)/芥川 龍之介

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【著者】芥川龍之介
【対象年齢】中学生・高校生

今回取りあげるのは、芥川龍之介の代表作とも言うべき「芋粥」です。
芋粥というのは、お粥の中に山芋を入れ、甘葛で味付けしたシンプルな料理です。
この甘葛というのがポイントで、昔は甘い物が貴重だったため
芋粥も普段は食べることができないご馳走だったようです。

以下は読書のポイント

【あらすじ】
京都の藤原基経に仕えるある五位(侍の階級)の侍がいた。
赤い鼻とみすぼらしい衣、そして気弱な性格で、同僚や子供にも馬鹿にされていた彼だが、
ある願いをいつも胸に秘めていた。
それは、年に一度食べることができる芋粥を、飽きるほど食べてみたいというものである。
ある日、宴の席で藤原利仁にその願いを偶然聞かれ、五位は敦賀にある利仁の家に招待される。
利仁は、使用人を総動員して大量の芋粥を作らせた。
しかし、それを見た五位はあれほど食べたかった芋粥を前にして食欲を失ってしまうのだった。

【思い焦がれるという楽しみ】
飽きるほど何かをしたいという願いは、誰しも一度は持ったことがあると思います。
デザートをひとりじめしてみたい、ホテルのスイートルームを貸しきりたいなどいろいろあるでしょう。
しかし、いざ願いが実現すると、思っていたほど良いものではなかったりします。
好物のデザートも、すぐ飽きてしまったり、
広い部屋に止まっても落ち着かなくて眠れなかったり、
実は待ち望んでいるうちが花だったということも、珍しくありません。
ここまでならよくある話なのですが、この作品ではもう一歩踏み込んでいます。

 どうもこう容易に「芋粥に飽かん」ことが、事実となって現れては、
 せっかく今まで、何年となく、しんぼうして待っていたのが、
 いかにも、むだなほねおりのように、みえてしまう。

欲求が満たされるということは、裏を返せば、思い焦がれるという楽しみが
無くなってしまうという事でもあります。主人公の五位はそれを恐れるわけです。
このような逆説的な楽しみというものは、なんとも日本的なテーマではないでしょうか。