娘が受験期の中学3年生の夏休み直前。
私は私立高校の服飾科に進学させようと
パンフレットを取り寄せていました。
シラバスを見ると、ほとんど実習で、
英語と国語がちょろちょろとあるだけで数学は皆無です。
私は娘にとってこんな楽園のような学校は
他にないのではないかと思いました。
すると娘がこんなことを言い出したのです。
「私、やっぱり大学に行く。
高校から専門の学校に行ったら、選択肢が狭まる気がするの。
私は自分のブランドを立ち上げて発信者になりたい。
そのために勉強したい。」
私はびっくり仰天してしまいました。
選択肢や発信者という言葉が、
娘から出たことも驚きでしたが、
まさか大学に行って勉強したいなどと考えるなんて。
娘が言うには、「プラダを着た悪魔」という映画を見てから
考えが変わったというのです。
正直、私は困りました。
娘の2つ下に弟がいます。
勉強好きの弟は大学へ進学希望です。
地方都市に住む私たちにとって大学に進学することは
家を出ることを意味します。
わー、大学に二人で行けば、
2年間重なって経済的負担がかかる。どうしよう?
お金がないよ~
しかし一度言い出したら後には引かない娘の事、私は力なく
「だったら高校は公立高校に行ってね。勉強しないとだめよ。」
と言うのがやっとでした。
そして成績の悪い娘のために、
夏期講習を受けさせようと塾に電話をいれるのですが、
その受講料の高さにびっくりしました。
しょうがない、私も20代のころは塾の講師をしていた。
面倒だけど私が教えようかぁ。
と高い塾代をケチって自宅でのお母さん塾が始まったのでした。
英語や社会などの文系科目は、
娘と資料集などを見ながら楽しくできました。
しかし私の専門の数学はどうしても娘に
教えることができませんでした。
なぜかというと、とにかく娘は察しが悪いのです。
中学1年生のときから
一人ウインドウショッピング大好きの娘は
自分で洋服などの買い物をしていました。
買いたい服があるというので、
その金額を渡したところ、
買えなかったとしょんぼりして帰ってきたことがあります。
どうして?と娘に聞くと、
「だって2割引きになってていくらになるか分からなくて
お金が足りなかったらいけないから。」との返事。
私は開いた口がふさがりませんでした。
気をとりなおしてわざと優しく言いました。
「あのねぇ、真歩ちゃん。
大体割引きっていうぐらいだから、
今ついてる値段より高くなることはないんよ。」
「えっ、そうなん?」とびっくり顔。
私の方がびっくりです。
「じゃあ、いくらになるん?」と娘。
「あのね、2割とかっていうのは割合っていうんだけどね、
あるものを1とするよ。それの0.2が2割っていうの。」
「1ってどっからきたん(どこから来たの)?」
「どっからって、1はあるものよ。」
「あるものって?」
「あるものはあるものよ。
もー、とにかく1にするの。
真歩ちゃんの買いたい服を1にして
それの0.2倍をした金額を引くのよ。」
この辺からだんだんイライラしてきます。
「え~、わからん。なんでかけるん?(なぜ掛けるのか?)」
「もーう、とにかく掛けるの。そして引くのよ。」
それでもまだわからないを連発するので私も臨界点にきて、
「わからなかったら、覚えなさい!!」と怒鳴りつけるのでした。
仕事として出会ったお子さんなら、
もう少し丁寧に教えたかもしれませんが、
我が子なのでだんだん腹が立ってきます(笑)
そんなこんなで数学は教えたくなかったのです。
また受験まで日にちがあまりありません。
基礎力のない数学に時間をかけるより
暗記科目で確実に点を取る戦略を選びました。
そして数学は、計算問題の大問1を機械的に練習させ、
ここだけで点数を稼ぐように言いました。
つづく