「……は!?」
「おはよう」(しまった……また寝過ごした……)
「どうした?」
「……桧山さん、今日は何時に起きたんですか?」
「5時だ」
「夕べ寝たのは……」
「3時だ」
(二時間……勝負は、その短い時間帯しかない……)
「私、今日こそ桧山さんより遅く寝ます」
「まだ言ってるのか……」「俺の寝顔なんて見て、一体どうするんだ」
ショートスリーパーの桧山さんは、私より遅く寝て早く起きる。
その為、桧山さんの寝顔をまだ見たことがない……。
(今日こそは、桧山さんより早起きをしようと決めてたのに……)
「とにかく、今夜こそは……!」
闘志を燃え上がらせる私の横で、桧山さんは冷静な顔で身支度を整えている。
「……でも、なるべく早く寝てくださいね」
「それはわからない」
「では行ってくる」
扉が閉まり、桧山さんは出て行った。
(まだ6時なのに……)
ベッドからもそもそと起き上がり、私も身支度を済ませる――
「桧山さん……」
「なんだ」「まだ、寝ないんですか……」
時刻はとっくに2時を回っている……。
なのに桧山さんがベッドに入る気配が全然ない……。
「私、もう眠いんですが……」
「だったら寝たらいい、睡眠は大事だぞ」「そう思うなら、桧山さんも寝ましょうよ……」
「まだ早すぎる……この仕事が終わってからだ」
パソコンから視線を逸らすことなく、桧山さんはキーボードを打ち込み続ける。
(ああ……眠くなってきた……)
カタカタと鳴るキーボードの音が心地いい……。
「そうだ、〇〇。来週の予定だが……」「……」
「……やはり寝たか」
「寝顔が見たい……か」
「気持ちはわかる……これはなかなか癒されるものだ」「一日の疲れが飛ぶ……寝顔が見たいのは、俺も同じだ」
桧山さんが何か話しているのが、聞こえるような気がする……。
(桧山さ……ん……)
だけど、落ちて行く意識を掴むことはできなかった……。
「……!」
(ね、寝てた!?)
勢いよく起き上がるも、あたりはまだ暗い。
(桧山さんは……!?)
「あ……」
「……」
(寝てる……)
時計を見ると、時刻は3時半。
おそらく、さっき寝たばかりなのだろう。
(寝顔、見れた……!)
すぐ隣で、整った寝息を繰り返す桧山さん。
初めて見る、その寝顔は――――
(……癒される)
(こうしてると普通の……整った男の人って感じなのにな……)
やり手の若き社長、情報屋、協力者……
無防備な寝顔からは、そんなハードな肩書は想像ができなくて……
(……可愛い、かも……)
いつまでも眺めていたい……そんな気持ちを抱きながら目の前の人に寄り添う。
(このまま、朝起きる瞬間も見てようかな……)
「……!」
「おはよう」起き上がると、そこにはすでに完璧に身支度を終えた桧山さんが。
「結局、ゆうべも寝落ちしていたな」
「寝落ち……」
たしかに夜中は寝落ちをしてしまった。
そのせいで、起きる桧山さんを見ることはできなかったけど―――
(私、寝顔は見れたんだ……!)
「やはり無理はよくない。今夜からはいつも通りの時間に寝るように」「……」
「?〇〇?」
夕べの桧山さんの寝顔を思い出し、幸せな気持ちで胸がいっぱいになる。
「……早く寝れるのが嬉しいのか?」
「え?いや、そうでなくて……」
「ニヤけて、どうした?」
m「え、ニヤけてました?」
どうやら、幸せな気持ちは顔にまで出ていたらしい。
「……おかしなやつだ」「それでは、行ってくる」
「はい、いってらっしゃい!」
幸せな気分で、桧山さんを見送る。
満足感と達成感に包まれながら、私も出勤の準備を始める。
(……なんか今日一日、頑張れそう!)
朝日がいつもより、眩しく感じた―――。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
(*´艸`*) ほっこり♡
ですが、桧山さんの寝顔はまだ
主人公ちゃんのものなのね…
見たかったなぁ…(*≧m≦*)