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渡部「そういえば、イケメン決定戦の結果聞いた~?」

ある日唐突に、渡部のヤツがそんなことを言い出した。

「!」

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青山「なんですかそれ」

渡部「なーんか、省庁の女の子たちが手近なところにいる独身男の中から」

渡部「イケメンナンバーワンを決めようってことで投票やったらしいよ」

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夏目「へ~」

夏目「くだらないですね」

由井「暇なんだろう」

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今大路「平和そうで何よりですね」

「ハハ」

渡部「あーあー、誰か1人くらい結果はどうだったか聞いてくれてもいいんじゃないの」

「アハハ」

「じゃ、結果はどうだったんですか」

渡部「関が1位だって」

「え……」

「おおっ!」

渡部「で、今大路くんが2位」

夏目「あーなるほどって感じですね」

夏目「人当たりいいメンツ」

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「……そうかな」

バレンタインに管理職に集まる義理チョコのようなものだろうとは思うけれど。

まぁ、バレンタインにしろナントカ選手権にしろ、1位にしろ最下位にしろ、俺にはどうでもいいことだった。

 

「あ、そうだ」

「大輔さん、おめでとうございます!」

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「……は?」

「あはは、やっぱり忘れてる」

「イケメン決定戦、1位だったでしょ」

「ああ……」

「はは、ありがとう」

「わ~すっごくどうでも良さそう……」

「まぁ、どうでもいいからね」

「あ~あ、おめでたいのに」

穏やかに笑って、〇〇はソファの背もたれに身を預ける。

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―― “おめでたい”。

もし逆の立場なら、俺はこんな風に泰然としていられるだろうか。

もしも、〇〇が男性陣からの投票で1位になったら。

「……」

仮定の想像は、いかに自分が狭量な人間であるかを思い知るだけで終わった。

「大輔さん」

「ん……?」

「ここだけの話、私も大輔さんに投票しました!」

〇〇は一気に早口でそう言うと、いたずらを告白させられた子供のように、情けない笑顔で小さく肩をすくめた。

「え……」

「だ、だった……」

「しょうがないでしょう!?」

「私には大輔さんしか投票したい人がいないわけだし」

「誰にするって聞かれちゃったら……ねぇ?」

頭を掻いて、照れくささのにじむズルい笑み。

どうでもいいはずの1位。

それでも、彼女からの票が入っているのだと思うと、まんざらでもない気分になってくるのだから、我ながら現金なものだ。

「でも……加担した責任として、今に1位の隣に立っても恥ずかしくない女になってみせますから」

〇〇は花の咲いたような笑顔でそう宣言した後、下から俺の顔を覗き込んだ。

「……待っててくださいね、大輔さん」

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「……」

……まったく、君は。

 なんとも表現しがたい想いが突き上げて、衝動のままに彼女を抱きしめた。

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言葉にならない思いを、抱きしめる腕の強さで伝える。

彼女はそれに応えるように、ことさら強く俺を抱きしめ返した。

例えようのない胸の疼きに、息を詰める。

「大輔さん?」

――〇〇。

「どうし――」

言葉の続きを奪うように、唇をふさいだ。

細い腕で、小さな体で、それでも精一杯俺を包みこもうとする〇〇。

君はきっと、半分も分かっていない。

俺がどれだけ君を愛しているのかも、どれだけ抱きたいと思っているのかも。

そして俺が、どれだけじょうもない男であるのかも。

「〇〇……」

こうして、誰よりも守りたい女に、いっそ獣性すら帯びたような、獰猛な欲望を抱いている。

大切で、愛おしくて、抱きつぶしてしまいたい。

矛盾を孕んだ劣情に翻弄されるままに、俺は彼女の肌に、香りに、なすすべもなくのめり込んでいった。

 

ふ、となんとなしに意識が浮上して、まぶたを上げる。

目の前に、〇〇の寝顔があった。

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「……〇〇」

剥き出しの肩にブランケットを引き上げ、そのまま引き寄せる。

 「ん……」

むずかるように俺の胸に頬を摺り寄せて、またすうすうと穏やかな寝息を立てはじめる彼女を――

枕に頬杖をついて眺める。

柔らかな体温。

真っ白な首筋。

しどけなく緩んだ唇。

男として掻き立てられるものがあることは否めない。

“いわゆる肉食系ではない”と、彼女に自己申請したのはいつだったか。

まったく、聞いて呆れるとはこのことだ。

“流されやすい草食系”と渡部に言わしめた自分は、一体どこへ行ったのだろう。

〇〇と出会う以前の“当たり前”は、彼女が絡めばことごとく無力で。

自分でさえ知らなかった自分が、彼女によって次々に暴かれていく。

7つも年下の彼女にみっともなくがっついて、そのくせ彼女にはいい格好をしたくて取り繕って……

新たに知った自分は、なかなかに情けない。

むしろ、俺の方こそ君にふさわしい男なのか、疑わしく思えるくらいに。

“今に1位の隣に立っても恥ずかしくない女になってみせますから”

“待っててくださいね”

花の咲いたような笑顔でそう宣言した〇〇を、その寝顔に重ねる。

俺には勿体ないほどの女性だと、素直に思う。

――もっとも、だからといって他の男にくれてやるほど、お優しい人間ではないけれど。

「ん……大輔さん?」

「あ……」

「まだもうちょっと……寝ましょうよ」

とろりとした目をさらに細め、ふにゃっとほほ笑むと、〇〇はせがむようにこちらに両手を差し伸べた。

「……」

思うに、彼女は自分の破壊力を全く分かっていない。

ため息をつきながら、彼女の頬に唇を寄せる。

首筋に彼女の腕が巻き付くのを確認して、目を閉じた。

鼻腔をくすぐる彼女の香り。

とてもじゃないが寝付けそうにないけれど……

まぁ、仕方がない。

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小さなため息とともに、俺は気持ち良さげに眠りに落ちていく〇〇の耳朶に、もうひとつ、キスを落とした。

 

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(*>ω<*)

野獣キャ━━(#゚ロ゚#)━━ッ!!

 

このストーリー、

一瞬、限定記事にしようか…と

迷いました(笑)