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「あっ……」

峻さんと一緒にふらりと立ち寄った雑貨店。

お店に入った途端、私の目にある物が留まる。

(すっごい不機嫌そうな顔……)

棚からつり下げられているマスコットは何がそんなに不満なのか、口をへの字にしてよそを見ている。

その愛想のない顔が逆に可愛くて、思わず手に取ってしまった。

(うーん、なんて媚びないデザイン)

見れば見るほど味があるように感じられる。

そんな風に商品に熱中している私が気になったのか、峻さんは隣にやって来て……

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「何見てんだ?」

「これ、可愛くないですか?」

「……なんだそれ」

返ってきたリアクションはいまいちで、峻さんは眉間に少し皺を寄せる。

「なんのキャラかは不明ですが……グッと来ました」

「お前のセンスはどうなってんだ?どう見ても不細工だろ、それ」

「そうですか?一周回って可愛い気がするんですけど……」

これがいわゆる『ブサかわ』というやつなのだろう。

とはいえ、どうして一目でここまで心を掴まれるのか。

(マスコットとか特別好きってわけじゃないんだけど――)

(あ、分かった!)

「これ、峻さんに似てるからだ」

納得いく答えを見つけて、思わずそれを口に出してしまう。

すると隣にあった顔が、マスコット同じく不機嫌なものになる。

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「…………」

「ほら、そっくりですよ」

顔のすぐそばにマスコットを並べると、峻さんは無言のままどこかに行ってしまう。

(なんだろう……何か反撃される予感がする……)

峻さんの性格上、絶対に黙って見過ごしてはくれないだろう。

(うわ、すっごい棚を物色してる……)

目的の物を見つけたのか動きがピタリと留まる。

それから今度は余裕の表情を浮かべてこちらを振り返り、私に何かを差し出した。

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「これはあなたにそっくりですよ」

峻さんが手にしているのは大きく口を開けて寝ているマスコット。

(たぶんこれ、怒る所なんだろうけど……)

「峻さんって……案外私のこと可愛いと思ってくれてるんですね?」

「は……?」

残念ながら、このマスコットで私を喜ばせることはできても怒らせることはできない。

「だってこれ、可愛くないですか?顔はちょっと間抜けですけど……愛嬌があります」

「これも買って2体玄関に並べようかな」

ちょうど何か飾りが欲しいと思っていたところだ。

(いいインテリアになりそう)

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「……お前の目、どうなってんだよ」

「結構いいセンスしてると思うんですけど?」

「うるせー」

そう言って私の言葉を一蹴してから、峻さんは私に向かって手を出す。

「ほら」

「も、もしかして没収するつもりですか……!?」

「駄目ですよ。この2つは絶対買うって決めましたから」

その魔の手から守るようにさっと胸に抱くと、露骨にため息をつかれる。

「買ってやるって言ってんだよ」

「言ってないじゃないですか」

「いいから寄越せ」

大きな手のひらに小さなマスコットを2つそっと乗せる。

「ふふふ。大事にしますね」

嬉しくて思わずこぼれた笑い。

それを見た峻さんは、今度はため息をつかずふっと微笑む。

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「好きにしろ」

マスコットみたいに不機嫌な顔も嫌いじゃないけれど、

やっぱり1番好きなのはこの笑顔だと改めて思うのだった。