二年生になり、初めての席替え、奇抜なことで有名な篠原の真後ろに座ることになった。
篠原はキャベツとトマトがこの上なく嫌いで、トマトを栽培する授業をサボる。
急ににやにや笑い出す。指定の上靴の靴ひもは、ライムグリーンのものにしてしまう。
中学入学と同時に、そんな風変わりなエピソードが、隣のクラスの私のもとにまで広まった。
だからどんな変人なのだと踏んでいたのだけれど、見たところでは悪ぶっている様子もなく、
オタクっぽくも、チャラそうでもない。
外見に限って言えば、むしろかっこいい方で、ミステリアスな雰囲気さえ醸し出している。
黒々と伸びる少々長めの襟足と、時折覗く高い鼻を眺めながらそんなことを私は思う。
昼休み、そう報告すると早弥は、違う違う、とやけに知ったような顔で笑った。
「そういう領域じゃないと思うよ、篠原は」
クラス替えに際して配られた自己紹介カードの空欄をさくさくと埋める合間に、早弥はきつく結わえたポニーテールを揺らし、冷笑めいた表情を私に向ける。
「領域?」
早弥の言葉のチョイスが、時々分からない。
「レベルってこと。独特すぎるんだよ」
血液型、A。趣味、バレーボール。将来の夢、獣医。
獣医? イタリアンレストランを開業する夢はどうしたのだろう。
「KYなだけじゃなくて?」
「空気読まないっていうか、うちらが酸素を吸ってたら、篠原は二酸化炭素なの。ね、特技んとこどうしよ?」
「バレーでいいじゃん。で、オーナーは諦めたの?」
「ホットケーキも焦がす女に、石窯でピザを焼けと」
「和食にしようよ。料亭建ててさ」
それもありかも、と消しゴムを取り出す早弥は既に眼中にはなくて、
私は二酸化炭素を体内に取り込む、環境にやさしい男子について考えてみていた。
光合成をする男子。
なんかいいかも、と私は思う。
草食系も嫌いではないが、何しろ生産者だ。
浴びるものが光ではなく罵声や陰口だったとしても、消費者より断然いい。
ぴゅうと口笛にも似た音を立て、春風が世界を心地よく揺さぶる。
窓の方へ目をやる。
磨きぬかれたガラス越し、五分咲きの桜の木を、新たな予感を乗せた風が通りすぎた。
淡い紅色に色づいた春はいつだって、出会いを引き連れてふんわり舞い降りてくる。
それにしても、今この時、篠原の後ろ姿が脳裏をよぎるのはなぜだろう。
※。.:*:・'°☆★*☆♪※。.:*:・'°☆
短編小説でした。(*´∀`)
ほんとはもうちょっと掘り下げて、篠原もしっかりキャラづけして、
告る一歩手前で切ろうと思ってたんですけどね。
だらだらしょうもないことを連ねるより、ここでばっさり落としたほうが、
なんとなく美しいかなーと。
なので、「予感」だけを残して終わらせました。
「落ちる」瞬間て多分こんなのなんだと思われますー。
余韻が残ってるといいのだが ( ´_ゝ`)
ん、じゃーね。ノシ