「シャミー・アイ~死のマリオネット~」-25- | BLACK-SKY

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ひとりごととか、小説だとか。

取るに足らない言葉たちの遊戯会。




授業は既に六時間目を迎えていた。

ベティ・エバンズは動物が描かれた鉛筆をくるくると回しながら、算数の授業を軽く聞き流していた。


ベティの注意は、先程から前方のシャミーへと向けられていた。



どうもこの授業が始まった辺りから、シャミーは体調が優れないようで――最近は何故だかいつもそうなのだが――急に俯いたかと思うと伸びをしたり、首を回して凝りをほぐしたりと落ち着きがなかった。


やはり、頭痛とか眩暈とか、そういうのだろうか。

ベティは先日シャミーが倒れたことをぼんやりと思いだしながら、考えを巡らせる。



「じゃあ、ワークを開いてください」先生が言った。

ベティは我に返り、辛うじて視界の隅に親友の姿を捉えたまま指定されたページを開き、鉛筆を握り直して問題に挑み始める――



その時、俯いてワークに取り組んでいたはずのシャミーが、急に顔を上げた。


何事かとつられてベティも顔を上げ、親友の表情を窺う。


ベティの無二の親友は、先程の苦しげな様子はどこへやら、整ったその顔にどこか謎めいた輝かしいばかりの微笑みを湛えていた。







                    ***







頭痛により齎される尋常ではない痛みとの孤独な戦いを繰り広げながら、シャミーは相変わらず例の出来事について考えあぐねていた。


おそらく自分の命を狙っているであろう相手――エリーゼ・リシェルで間違いないだろう――に対抗するには、どうすればいいのか。


エリーゼが「死のマリオネット」を持っているとするならば、もはや一刻の猶予も許されない。


今こうして退屈極まりない授業を受けている間にも、エリーゼがマリオネットの心臓にあたる部分に釘を打ち込んでしまうかもしれないのだ。

あるいは水に沈めさせてしまうのかも。

はたまた、道路に放置して車に轢かせる、という手口も十分考えられること。



つまり重要なのは、一分一秒でも早く何らかの手立てを考え、相手に勘付かれないようそれを素早く実行してしまうことなのだが――






――要するに、「マリオネット」を奪い去ってしまえばいいのではないだろうか。


シャミーはふと、インスピレーションが湧くのを感じた。

心臓が跳ねるのを感じつつ、頭に走る痛みも忘れてシャミーは更に考えを巡らせる。




「死のマリオネット」をエリーゼから奪い去るためには……まず、エリーゼの家に忍び込むことだ。


それは同時に、サンダーの家に忍び込むことをも意味する。

サンダーはエリーゼの息子なのだから、当たり前と言えば当たり前なのであるが。


となると、侵入するのは……まず昼間は無理だ。

夜中か、もしくはリシェル一家が外出する際のみに限られるだろう。




ただ、問題なのは、いかにしてリシェル家の誰にも悟られずに家に忍び込むかということだ。


それに加え、家の中の何処に「マリオネット」が仕舞ってあるのか。

その点についても何とか突き止めなければなるまい。




だが、もしマリオネットの居場所を突き止め、侵入に成功したとして、最も難関なのは、どうすれば一人にも気づかれず、事をやり遂げられるかということであろう。







……命には代えられないとはいえ、なんてリスクが高く、成功率の低い計画なのだろう。

シャミーは授業中だということも忘れ、自嘲的な笑みをふっと漏らす。




「ブルータス!  今はワークに取り組むべき時間ですよ」


先生の嫌味ったらしい怒声を浴び、シャミーははっと我に返る。

そうだ、授業中だということを忘れていた。我ながらなんと迂闊だったことか。



「すいません、先生」

シャミーの抑揚のない声色が気に食わなかったのか、先生は尚もしつこく喰らいついてきた。

「ブルータス、幾ら学年でトップだからといって、真面目に授業をこなしていなければ何にもならないのですよ。特に近頃は気が緩んでいるらしいですね。このままでは私共としても、ご両親に相談など何か手を打たなくてはなりませんねぇ」



先生の意地悪な台詞に、短気なシャミーは苛立ちを覚える。



――あんなの、超能力で吹っ飛ばしてやりたい。




心の中で恨みを込めて呟いてから、シャミーははっとした。








――超能力? ……それだ!









求め続けてきたパズルのピースがようやく嵌まった、そんな気がした。








事を無事終えられるであろう解が、ようやく見つかったのである。








水晶玉を使う――それが、考え続けた末シャミーが出した結論だった。