「シャミー・アイ~死のマリオネット~」-23- | BLACK-SKY

BLACK-SKY

ひとりごととか、小説だとか。

取るに足らない言葉たちの遊戯会。


――自分は、命を狙われているのかもしれない。



そんな根拠のない思いがふと芽生えてからというもの、シャミーの心は一時も休まることはなかった。学校でつまらない授業を聞いている時も、家で中身のないテレビを見ている時も、だ。





――そんなこと、あるはずがない。

   到底起こり得るはずなどないのだ。




何度そう思ったことか。

何度そう願ったことか。


が、簡単に割り切ってしまうことなど、出来はしなかった。


大抵の場合、一度そうと思い込んでしまったなら、その考えからは抜け出せないものなのだ。



それが、どんなに突拍子もなく、起こり得るはずがない、起こり得てはならない考えだったとしても、だ。










――また痛みだした……。



五時間目の理科の時間のことだった。

シャミーは手にした空の試験管を試験管立てに戻すと、簡素な木の椅子に腰掛けて、疼き出した頭を左手で抱えた。


「シャミー、どうしたの?」

声のした方を振り返ると、眩暈で歪んだ視界に、クリスの端正な顔が不安げに顰められている姿が映った。

「ありがとう、でも大丈夫」シャミーは無理に笑ってみせた。

「シャミー、無理しない方がいいよ」クリスは眉を吊り上げた。なるべく自然な笑みに見えるよう努めたのだが、もしかすると顔が引き攣っていたのかもしれない。

「ありがとう、でも本当に――……えっ?」

「え、どうしたの? シャミー? どうかした?」



不安気なクリスの声色さえも、シャミーの耳には届かなかった。



シャミーが聞いていたのは、クリスの声ではなく、聞こえるはずがない声だったからだ。





























「シャミー・ブルータス……忌まわしい小童」



シャミーは自分の耳を疑った。

地獄から聞こえてくるような、掠れた女の声。

そんな声は、理科室で座っている自分に聞こえるはずなどないのに、だ。








「……クソガキめ」



また、聞こえた。

私の耳は、どうかしてしまったのだろうか。








「死んでしまえ――」



ああ、狂ってしまいそうだ。

この女――おそらくエリーゼ・リシェル――と同様に。

これが幻聴だったらどんなにいいことか。








「消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ……殺してやる」

































「……えっ?」









やはり、私は――命を狙われている?







「え? どうしたの、シャミー? どうかした?」


放心状態のシャミーには、クリスの声もまるで耳に届かなかった。












やがて――世界は歪み、シャミーは闇の彼方へと堕ちていった。