目を覚ますと、視界に入ってきたのは、白い天井だった。
――ここはどこ?
シャミーは一瞬状況を把握しきれずに頭を悩ませたが、数秒もすると、先程の出来事を思い出した。
――ああ。私は、倒れたんだっけ。
そういえば自分は、信号前で眩暈で倒れて、そのまま気を失ったのだった。
世界が渦巻き、忘却の彼方へ消え去っていきそうな感覚と、倒れる間際に聞いた絶叫する女の声を思い出し、シャミーは震えた。
あの叫び声は、何だったのだろう?
いや、そもそも、あれは誰の叫び声だったのだろう?
あの声は一度、確かにどこかで聞いたような気がするのだけれど……
果たしてどこで聞いたのだろうか。
天井に点々と残る薄茶の染みをじっと見つめ、記憶を手繰り寄せようと躍起になっていると、
「ブルータス。起きたのね」と、声がした。校医の先生だった。
寝返りを打って振り向くと、校医を務める中年女性が、笑いを浮かべて近寄ってくるところだった。
本人は「病人を優しくいたわる、患者に安心を与えるスマイル」とでも思っているのだろうが、実際のところそうではない。
シャミーは校医のこの笑みが嫌いだった。病人を小馬鹿にするような、哀れむような、その笑みが。
そうとも知らず、校医はその嫌らしい笑みを浮かべたまま、囁くような猫撫で声で話しかけてきた。
「あなたは、登校中に急に倒れたのよ」
「知っています」シャミーは挑戦的に答えた。
校医はその態度が気に入らないようで、顔を引き攣らせながらも続けた。
「ここまで、ベティ・エバンズが運んできてくれたのよ。いい友人を持って幸せねぇ」そしてそこで、微笑んで見せる。
シャミーは、この校医に限らず、時折大人が浮かべるこういう微笑みが、大嫌いだった。
全てを見透かすような微笑み。子供を安心させようとする微笑み。
しかし子供は、大人のそういう態度を嫌うものである。何もかもわかったような微笑みをされては、堪らないのだ。実際、何もわかっていないくせに。
「具合はどう? 倒れた時、何があったのかしら。具体的に」
「……眩暈がしたんです」この校医には、本当のことを話しても無駄だろう。「酷い眩暈だったんです。でも、私、もう何ともありません。授業に戻ってもいいですよね」
そう言うなり、シャミーはすぐにベッドから起きだし、唖然とする校医を無視して、おぼつかない足取りで教室へと歩いて行った。
***
女は左腕を押さえ、苦悶に満ちた表情で床の上をのたうち回っていた。
どうやら、「死のマリオネット」は失敗作だったようだ。
***
――退屈だな。
理科の授業中、クリスは鉛筆をくるくる回しながら、虚ろに授業を聞き流していた。
有名私立校の授業は無駄にレベルが高く、その内容はというと、大人は納得して喜ぶものではあったものの、十歳の子供にとっては、実に退屈だった。
別に、授業についていけないとかいう訳ではないのだ。むしろ、理解は出来るし、その理屈を今すぐ説明せよと言われたなら、ほぼ完璧に成せるだろう。
ただ、退屈なのである。
だから、教室のドアが急に開いて、よろめきながら歩くシャミーが入ってきた時や、先生が「ブルータス! 確か君は倒れて、保健室で眠っていると思ったのだが……」と問答を始めた時、授業が潰れてラッキーだったと密かに喜んだ。
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途中までですがタイムアウトなのでここまでにします (・∀・)
だから次の章はクリスの視点から、ここの続きから始まりますので。
ぇ、下書き保存してあとで書き足せって?←
そんな面倒臭いことはしないのが私だ (・∀・)
てことで。
じゃっ。