燦々と日差し降り注ぐ夏空の下で、シャミーは親友ベティと一緒に登校中だった。
最初、忌々しいサンダーの悪戯についての話に及んだものの、すぐに話は変わり、二人はクラスメイトの噂話や、昨日のテレビの話など、他愛もない話を交わし始めた。
話はすぐに弾み、学校はもう目の前に見えてきた。
あと、信号を一つ渡れば、すぐにラーシアス学園に到着だ。
「あ、あとさ、昨日、あたし買い物行ったんだよね」嬉しそうにベティは身振り手振りを交えて話す。
「へぇ。あの新しく出来たショッピングモール? 行くって言ってたよね、この前」
「そうなの。それでね――」
その時だった。
シャミーの視界が急激に歪み始め、渦巻いた。
――眩暈にしては酷過ぎる。
シャミーは吐き気を堪え、電柱にもたれかかった。
「ど、どうしたの? シャミー?」心配そうにシャミーを覗き込むベティの顔。その顔さえも歪み、二つに見える。
「だ、大丈夫。眩暈だから……すぐ治るからね」
そして眩暈に加え、左腕に走る刺すような痛み。シャミーは震える手で左腕をきゅっと押さえる。
世界が歪み、渦巻き、意識が遠のく。
もうダメだ。
それにしても……この眩暈は何なんだろう?
眩暈にしてはおかしい。風邪にしても急すぎる……
シャミーは遠のく意識の中で、絶叫する女の声を聞いていた。
***
「母さん! どうしたの?」
息子の心配そうな声がして、女はハッと我に返った。
「ええと……何のこと? 私、何かした? サンダー……」
「何かした、だって」息子は眉を顰めた。「玄関を出た時、母さんの悲鳴が聞こえたから戻って来たんだけど。何してたんだよ?」
「……何でもないわ。 何でもないから、早く行ってらっしゃい、サンダー」
「……うん」そう行って息子は、不安げな表情を残したまま玄関に消えて行った。
今、女は息子に嘘をついた。
本当は絶叫したのも、ちゃんと覚えていたのだった。
「……ああ、許せない。許せないわ」女は、息子が出て行ったのをカーテン越しに確かめると、力なくソファーに腰掛け、朝のニュースを報じるテレビを恨めしげに睨んだ。
ニュースは、有名な俳優とアイドルのスキャンダルを大袈裟に報じているところだった。
でも、さっきは――さっきは、確かに、憎い少女が、出ていたのだ。
CM。
最近話題の食品会社のCM。
それに、あいつは出ていた。
息子を、夫を、私を堕落させたあいつが、ニコニコ馬鹿みたいに笑って、CMの中で超能力なるものを披露していた。
許せない。
私たちの人生を狂わせておいて、何をニコニコ笑っていられる訳? ふざけるな。
そう思ったら、自然と叫んでいた。
「殺してやる」――
そう、女は叫んだ。