シャミー・ブルータスは晴れやかな面持ちで、学校への道を歩いていた。
心なしか足取りも軽い。
それもそうだ、やっとのことで、「悪戯」から解放されたのだ。
しかも「悪戯」の犯人であったサンダー・リシェルは、Aクラスから、Dクラスへの降格を言い渡されたと聞く。
名門私立であるラーシアス学園では、能力や成績別にクラス分けされているのだ。
トップのAクラスから、最低のDまでの、降格。
そんな不名誉を背負わされたサンダーは、これから先、周囲からの憐れみの眼差しに耐えて生きていかねばならないだろう。
サンダーには可哀想なことをしたとは思うが、これも運命なのだ。
そういう行動に及んだサンダーが、悪いのである。
「シャミー! おはよ!」聞きなれた声がした。
振り返ると、そこには大親友のベティーが居て、ニコニコ手を振っていた。
シャミーも笑顔でそれに応じる。
「シャミー、これでやっと、悩まなくて済むね。サンダー捕まってよかったね」走り寄ってくるなり、息を弾ませながらベティーはこう言った。
「うん――でも、ちょっと可哀想だと思わない?」
「可哀想?」ベティーの笑顔が歪んだ。 「何言ってんの?」
「うん、何でサンダーはあんなことしたのかなって。サンダー、先生に聞かれても何も言わなかったの。だからね、何か……事情? が、在ったんじゃないかなって思うの」
一瞬の静寂の後、ベティーが呆れたように笑った。
「シャミー、やっぱ変わってるね。すっごいお人良しだよ」
「そうかな」シャミーは微笑み返す。
***
あいつを殺してやる、あいつを殺してやる、あいつを殺してやる――
女は狂ったようにそう呟いた。
女は、部屋のカーテンをびっしり閉めきり、電気も、電気スタンドも点けず、薄暗い部屋の中で、唯一人、狂ったように呪いの言葉のようなものを呟き続けていた。
その血走った目は何も見てはいない。
血走った眼球は、ひっきりなしにぐるぐる回り続けている。まるで狂人のように。
その、魔女のように爪の伸びきった指は、虚空を摑んでいる。
リップクリームも付けず、乾燥しきった唇からは、不吉な言葉ばかりが、しきりに漏れ出ている。
――死ねばいい。あいつなんて、この世から消え去ってしまえばいい。
あの番組を観た時から、その思いは日ごと増すばかりであった。
そして幸か不幸か、女はそれを実行に移す術を知っていた。
――どうしようか。いっそのこと、一思いに殺ってしまおうか。
憎き少女を死に至らしめる方法。
それを女は知っていた。
でも、実行に移す勇気が、無い。
何しろ、使い方を一歩でも誤れば、女自身が命を落としかねないのだから。
女は迷っていた。
昨日の夜からずっと。
「あれ」を使うべきか使わないべきか、あの番組を観た日からずっと。
「あれ」――すなわち、「死のマリオネット」なるものを。