朝。
シャミーはぎゅっと左手を握り締め、右手で力強くがらりと教室のドアを開けた。
きっと鋭い視線をサンダーのもとに向ける。
するとなんとサンダーは、平然と涼しい顔をして友達と笑い話に興じていた。
――許せない。
自分の髪が赤く染まっていくのを感じる。無理もないとシャミーは思う。
近くにいた少年が、怯えたように後退り、シャミーから距離を置いた。
「シャミー、どうしたの?」
優しい声色がして振り返ると、何故だか、困惑の表情を浮かべたクリスが立っていた。
「何か――」
「そこ、退いて!」
シャミーはクリスを押し退け、憤懣やるかたない形相でサンダーの元へ突進していった。
「……何だよ、ブルータス?」気だるそうにサンダーが言う。その、面倒くさい、といった声色がシャミーの癇に障る。
「分かってるくせに。私の教科書破ったの、サンダーなんでしょ!」
「……ジェフリー」長い沈黙のあとでサンダーは無表情に言った。
「え?」
「ジェフリー!お前だな?そうだろ、卑怯者!」
唐突にサンダーがクリスのもとへ駆けていき、恨みを込めた表情でクリスの胸倉を掴んだ。もうシャミーには訳が分からなかった。
「クリス、何のこと――?」
「ブルータスは黙ってろよ!お前が言ったんだろ、ジェフリー!」
「ち……違う」苦しそうにクリスは言った。
「何だと?」
「誓って僕は言ってない。第一そんなこと、するはずないだろ――あの約束の後じゃ」
「でも俺は言った。ブルータスがこのことを知った場合、お前が告げ口したとみなすと――」
「何のこと?クリスは悪くない。私はただ、水晶玉でサンダーが犯人だってことを知ったの」
サンダーがゆっくりと振り返る。その表情には、明らかな憎しみが込められていた。
「『能力』で、お前が?」
「そう」
すると、サンダーは、なんと大声を上げて笑った。
「な……?」
「そういうことか。つまりお前は、『能力』に頼らないと何も出来ないんだな。全ては偉大な『能力』のお陰――ふん、爺さんの血が通ってるだけで偉そうにしやがって」
その言葉が、シャミーの怒りの琴線に触れた。
気が付くとシャミーは、思い切りサンダーを両手で突き飛ばしていた。