クリストファー・ジェフリーは、真っ暗な部屋の中、目を瞑りながら今朝のことを思い返していた。
意気揚々と、ベティ相手に犯人が分かるかもしれないと熱弁を振るうシャミー。
あの目の輝き方からして、シャミーが犯人を突き止めるのも時間の問題だろう――
クリスは、つい先日に起こったある出来事に思いを馳せる。
見るつもりはなかったのに、偶然目にしてしまったある出来事に。
そう、偶然なのだ。
見る気など、これっぽっちもなかったのだ。
なのに――
***
ある朝。
――正確に言うならば、シャミー・ブルータスの音楽の曲集に制裁を加えてやったあの日のあの朝だ。
サンダーは悪戯を施し終えた後、しばらくは自分の仕事の結果をしげしげと満足気に眺めていた。
おそらく、誰にも見つからないという根拠のない妄想に取り憑かれていたのだろう。
サンダーは慎重さというものをすっかり忘れきっていた。
――そう、その時、唐突に教室のドアが開いたのだ。
サンダーは「誰だ」とすぐ振り返った。
すると、そこには――信じられないといった表情のクリスが突っ立っていた。
「何だ、お前か。ミスター優等生くん」サンダーは引きつった微笑を浮かべた。
「リシェル……どうして……」
「どうして?あいつが嫌いだからに決まってるだろう?」
「……」
「お前だって内心では喜んでたんだろう。お前はいつも二番目だった。頑張ってもブルータスには勝てなかった。だろ?だから――」
「喜んでなんかない」
「へぇぇ。……まあこの際そんなことどうでもいいさ。問題は、お前がこのことを告げ口するかどうか、ってことだよ」
「……」
張り詰めた沈黙が流れた。
サンダーは至って普通の声色を出すよう心がけた。
「いいか、このことは誰にも言うな」
「え?」
「お前の胸に仕舞ってろ。いいな?」
「そんなこと出来る訳ないだろ?リシェル、君は間違ってる」
「へぇ……。俺が間違ってるって?」サンダーは眉を顰め、拳を握りしめた。
――こうなったら脅すしかない――
「いいか、こうしよう」
「は?」
「お前は俺が犯人だということを黙っている。そうすれば俺は、お前がブルータスの奴を好きだってことを黙っててやる」
「な……」
クリスは否定しない。
サンダーは更に追い打ちをかけた。
「もしお前がこのことをバラすなら、俺はお前の机に相合傘でも彫ってやるよ。それから黒板に書いて、ブルータスに偽のラブレターでも書けば、お前は――」
「――分かった」
「誰にも言わない……それで、いいんだろう?」
「勿論、それだけじゃよくない」
静かな教室の中に、サンダーの冷たい声が響き渡った。
「ブルータスの奴が犯人が俺だと知ってしまった時は、お前が告げ口したとみなすからな。いいな?」
***
知られてしまう。
知られてしまう。
シャミーに、知られてしまう。
そうしたら僕は、これからどうすればいいんだ?
そうしたら僕は、二度と学校に通えなくなる、かもしれない。
シャミーの気持ちが僕に向いていないことなど知ってる――
なのに、知られてしまうのだ――