ふと目が覚めた。
薄暗い中、窓から射す月明かりを頼りにシャミーは目覚まし時計の針を読んだ。
夜中の、一時半丁度。
――もう一度寝直そう……。
目を瞑る。
心を空っぽにして、眠りの世界へ落ちてゆく準備をする。
しかし、眠れない。
薄暗く空しい世界の中、シャミーは溜め息をつき、静かに瞬きした。
寝返りを打つ。
と、目に、先程母に譲り受けた水晶玉が飛び込んできた。
何故か鼓動が速まる。
シャミーは足音に気を付けつつ、そろりと立ち上がって水晶玉を手に取った。
丸くつるつるとした表面の冷たさが、肌に心地良かった。
――お母さんにはダメだと言われたけど、でも……
ばくばくと心臓が高鳴る音が今にも聞こえてきそうだ。
息詰まるような暗闇の中で、シャミーは決意した。
――こっそり、水晶玉を使ってみよう……
シャミーは忍び足で勉強机まで行き、そっと、電気スタンドの灯りを点けた。
***
同時刻。
少年はシャミー同様眠れなかった。
明日のことを考えると、不思議な緊張が体中を駆け巡り、どうしても眠れないのだ。
――明日、明日だ……明日、あいつはどんな顔をするだろう?
トマトみたいに髪まで真っ赤? それとも真っ青?気絶も面白いかもしれない……。
少年はカッターナイフを弄びながら考える。
明日自分がする「悪戯」について考える。
何をするかは特に決まっていないが、とにかくあいつが泣き叫ぶようなことをしてやるのだ。
明日だ。
明日には、きっと――
***
シャミーは目を瞑り、精神統一していた。
――どうか、私に嫌がらせをしている犯人を、教えて下さい。
――犯人を教えて下さい。
――教えて下さい……
シャミーは、睫毛の一本一本にまでも、怒りを、思いを、漲らせた。
そして静かに、瞼を開く――
水晶の正面に、紫の煙が渦巻き始めた。
一心に願い続ける。
すると、映ったものは――
「え……」
最初、何かの手違いか、見間違えだろうかと思った。
でも、紛れもなく、そこにはカッターと、カッターを弄ぶ犯人の手が映っていた。
――何これ? もしかして次はカッターを使うつもり?
恐怖がシャミーの胸に押し寄せて来た。
と、徐々に、手首から上が映され始めた。
「……これって……」
薄暗がりの中、瞳に狂気を漲らせてカッターナイフを弄ぶ少年。
シャミーがよく知っている顔だった。
犯人は――
サンダー・リシェルだった。