あれから十年。
シャミーは十歳の少女に成長していた。
あの時、言葉が喋れなかった頃、分からなかった「地球に匹敵するエネルギー」というのも、今なら少しは理解しているつもりだ。
ほとんどの場合、「私は十歳です」と答えると、大人はシャミーのことを子供とみなす。
理解能力に欠けたほんの小さな生き物だとみなす。
でも、十歳というと、かなり理解力がついてくる年齢だとシャミーは思う。
だから、どうってことはないのだが。
***
「ベティ!おはよう!」
聞きなれた、明るい声がした。
振り向くと、くるりとカールした金髪、深い青の瞳の奇麗な親友、シャミーが手を振っていた。
「おはよう、シャミー!」ベティは笑って手を振り返す。
ベティ・エバンズは、シャミーのたった一人の親友――と、ベティは思っている――だ。
「たった一人の」というのも、シャミーにはろくな友達がいないからだ。
シャミーは美人で、性格も悪くない。
レベルが高いことで知られる名門私立ラーシアス学園でもトップクラスの優秀さ。
運動も、楽々とこなす。
歌だって、上手。ピアノも弾ける、らしい。
おまけに、世界でも稀な能力――超能力を秘めた、しかも筋金入りの、エスパー。
だからシャミーは嫌われている。
プライドが高いラーシアス学園の皆に、敵対視されて、妬まれて、だから嫌われている。
でも自分は、そんな優秀なシャミーが、素直に好きだ。
だから友達になった。
だから親友になれた。
***
少年は、誰よりも早く、学校に着いた。
教室には誰もいない。
そのことを確かめると、少年はこそこそと教室に入った。
誰にも見られていないことを祈りながら。
――ここだ。
少年は目当ての机を見つけると、表情をほころばせた。
少年は知っている。「秀才」が昨日、この中に教科書を忍ばせてこっそり帰ったことを。
――クラス一の秀才のくせに、置き勉なんてどうかしてる。
だから少年は、そんないけない「秀才」に、天罰を下してやることに決めたのだ。
机に手を入れる。
指先に、かたい何かが触れる。
「何か」を握り、手を引き出す。
少年の手には、しっかりと、社会の教科書が握られていた。
――さあ、思い知れ、「秀才」め。
――せいぜい後悔するがいいさ。
少年は悪意に満ちた笑みを、まだあどけなさの残るその顔に浮かべる。
少年の顔が、悪意で奇妙に歪んだ。