「THUNDER・BLAST」ー第一章ー | BLACK-SKY

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ひとりごととか、小説だとか。

取るに足らない言葉たちの遊戯会。

人魚界と妖精界が、この世のどこかに、ひっそりと存在している。

妖精界の海の底に、人魚界は存在している。


しかし、妖精と人魚の歴史は、たったの二百年。

二百年前、人魚も妖精も、開拓などには目もくれずに勝手気ままに暮らしていた。


そんな中、二世界を変えるべく立ちあがったのが、妖精の血の流れている人魚、メフェル様だった。

メフェル様は二世界が始まって以来最初の女神となり、海底に立派な城を築きあげた。この城は今でもメフェル城として残っている。

メフェル様はこの城を建てた時、土地に散らばっていたたくさんの真珠を拾い上げ、一つ一つに妖精の持つ”妖術”と呼ばれるものと、人魚の持つ知能を注いだ。その真珠は後に”メフェルの涙”と呼ばれた。



話は現在に戻る。

海も陸も、ここ二百年というもの特にこれといった変化もなく、人間に見つかることも、魔界の者どもと争うこともなく、人々は穏やかに、平和に暮らしてきた。

しかし・・・・・・。物事が、永遠に良い方向に進み続けることなど有り得ない。


「ルーシア様!ウィーネ様から、伝言を預かって参りました。」

「レーム、ご苦労様。・・・・・おや!女神の側近ともいうおまえが、そんなに深刻な顔をして。我が友ウィーネに、何か・・・・・・ウィーネの妖精界に、何かあって?」

「ル、ルーシア様。お手数ですが、妖精界にお越し頂けますか?平気です、足と肺をつくる呪文は心得ておりますので。シェウル!

ルーシアの姿は青い鱗の人魚ではなく、美しいドレスをまとった人間になった。しかも、全身の周りを、巨大な空気の泡が包んでいる。レームの周りもそうだ。

二人は、妖精界の城へとワープした。「テームス!


玉座には、なめらかにカールした金髪の美しい女性が、立派な装いで背筋を正して座っていた。

ダイヤやサファイアの載ったゴールドのティアラは、妖精界の女神であるウィーネにぴったりで、とてもよく似合っていた。

ウィーネはルーシアを見ると厳かに立ち上がって、手を差し出した。

「私の良き友、ルーシア。」二人は握手した。

「レーム、ありがとうございました。」

レームは礼儀正しくお辞儀をした。


「ウィーネ、私を妖精界へ招いた訳は?」

柔らかな微笑みは一瞬にしてウィーネから消え失せ、深刻な表情へと変わった。

「ルーシア、我が国の有名な予言者コアンナが、新たな予言を新たな予言を発表したのです。決して些細な事ではないと思います・・・・・・。私の妖精界のみではなく、あなたの人魚界をも含めての予言なのです。聞いて頂けますね?」

「ああ。それで、コアンナはどこに?」

「隣の部屋に待たせてあります。・・・・・・レーム、コアンナをここへ呼んでくれますか」

「かしこまりました」レームは一礼して、部屋を出て行った。


程なくして、背が低い中年の女性、コアンナが部屋に入ってきた。三人は、眉間に皺を寄せてゆっくりと椅子に座るコアンナを見つめていた。

「どうぞ、予言をもう一度聞かせて下さい」ウィーネが促した。

コアンナは頷いてから息を深く吸い、目を閉じた。目を開いたとき、コアンナの表情はさっきと変わって見えた。眉間に皺を寄せ、口をぎゅっと結んだコアンナは、十分間を置いたあと 震える声で話し始めた。


「私には見えます――」間。

「――苦しみ、怯える人々の姿が。」コアンナはここで再度、大袈裟に息を深く、深く吸った。

「二つの大きな国に、大きな黒雲が近づいてきているのが、私には見えます。・・・・・・今にも雷が鳴り轟きそうにしながら。黒雲は二つの国を覆い隠して、雨を降らせ、雷を落とし、突風を吹かせるでしょう。しかし、黒雲を消し去ることが出来る者がいます――妖精界でも、人魚界でも、魔界でもない国に」


「つまり・・・・・・災難が訪れると?私らの国に。そして、それを片づけてしまえるのは・・・・・・わかった、人間界だ!人間だ!」

「多分そういうことでしょう。しかし・・・・・・。人間は山ほどいます。その中から、どうして真の人間を見つけられましょう?」ウィーネが困り果てた声を出した。

「待って下さい」コアンナが震える声で言った。

「その者は・・・・・・妖気を感じ取ることが出来るでしょう。・・・・・・しかし、やはりそれだけでは・・・・・・分かるとはお思いになりませんね」


「・・・・・・いいえ、コアンナ。妖気を感じ取れるというのなら、メフェルの涙を地上にばらまいてはいかがでしょう?拾われなかった”涙”は、きちんと返るよう呪文をかけて。メフェルの涙は、妖力を感じ取れない者にとっては、価値のないただの石にしか見えません。しかし能力ある者にとっては、神秘的で素敵な、魅力ある真珠に見えます。」

「でも、ウィーネ!正気か?海底の宝を、汚らしい人間界に放り込むというのか?」

「この国を救うのは、その汚らしい国にいる素晴らしい人間なのですよ。ルーシア、いいですよね?」

「・・・・・・全く、強情っ張りなんだから!好きにするがいいさ。・・・・・・ところで、その黒雲や雷というのは、具体的にどういうものかは分からないと?」

「そうみたいですね。景色が・・・・・・この城から一望できる素晴らしい風景が、変わらなければいいのだけれど。黒雲や雷って、災害かしら?殺人かしら?」ウィーネは悲しげに溜め息をついた。

「知らないけれど・・・・・・ひどいことには違いないさ。コアンナの祖父は、有名な占い師だったことだしね。どんな些細な出来事でも、恐ろしい程ピタリと当てたらしいってね・・・・・・。コアンナが祖父の才能を、あまり受け継いでいないことを祈るよ。」コアンナもルーシアも、目を合わせて苦々しく笑った。


「ルーシア、不幸にも・・・・・・コアンナの占いや予言は、驚くほどよく当たるんですの。ええ・・・・・・驚くほどに。」

ウィーネもルーシアも、美しい窓の外の景色を、悲しげにみつめた。