部屋に着いた途端、

有村澪が玄関で崩れ落ちそうになったので

ベッドまで運んで一緒に倒れこむ。


まだ、涙の乾かないまつ毛に、くちびるを近づけてみるけれど、

眠ってしまったのか動かない。

【おい】

声掛けにも反応がなく

安らかな寝息と表情に、とがった心が癒される。

1時間はそうしたままでいた。


【なぁ、兄弟とか、考えないでくれないか】

眠る彼女にささやいてみる

「単品で考えたらどうなるんですか」

翌朝、ベッドの隅に移動した澪の言葉への

対応がわからない

「なんでもないです。帰りましょう、
仕事、あるんでしょう?」

ありがとうございました。

【うん】

「拾ってもらえてよかったです」

【言ってる意味がよくわからない。】

「そのままです。
意味なんてありませんよ」

澪のスマホには仗助の学ランのアクセサリーモチーフのストラップがついてる。

【これ、俺と同じ

「えっ。そうなんですか?
映画館の売店に売ってました。」

【実写、観たのか】

観てなくて、グッズだけ見に行ったんだけど。

「男の人と一晩一緒にいても、何もないことがあるってこと

はじめて知りました。」

どこかさみしげな表情に、目を奪われる。

どうして、そんな顔するんだよ