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以前に比べ離乳が早まったことや、おしゃぶりを使う機会が減ったことで、多くの日本人、特に若者の間で「口呼吸」が増えつつあると言われているが、心当たりのある読者は、なるべく早いうちに鼻呼吸に切り替えた方が良いかもしれない。
■鼻呼吸で頭が良くなる?
米雑誌「Mindful」オンライン版(2月16日付)などによると、ノースウェスタン大学フェインバーグ医学院の研究者らが、脳の機能と「鼻呼吸」が密接に関係していることを突き止めたという。
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しばしば鼻呼吸の方が頭に良いといわれるが、実はそれには脳科学的な理由が存在する。嗅覚皮質における電気刺激の調整において鼻呼吸が極めて重要な役割を果たしており、嗅覚系と隣接する情動・記憶・行動に関与する大脳辺縁系にも大きな影響を与えていると考えられているからだ。そのため、匂いはしばしば記憶を鮮明に蘇らせることがある。
今回の研究も上述の仮説の延長線上に位置づけられるものだ。フェインバーグ医学院の研究チームは2つの実験によりこのことを確認した。
1つ目の実験では、7人のてんかん患者の脳波を測定したところ、自然で自発的な呼吸のリズムと嗅覚系に見られる遅い脳波リズムが同期していることが判明。また、鼻呼吸の際には情動などを司る扁桃体や、記憶を司る海馬に速い脳波リズムが見られたという。
研究者らは、嗅覚系が脳におけるオーケストラのような役割を持ち脳波のリズムを整えているのではないかと解釈している。
2つ目の実験では、60人の健康な被験者に対し認知と情動機能に関するテストを実施。具体的には、被験者に怖い顔と驚いた顔の写真を見せ、どの感情の表現であるか出来る限りはやく認識させた。鼻呼吸の状態と口呼吸の状態で実験したところ、平均して鼻呼吸をしていた時の方が、怖い顔を認識するスピードが速いことが分かったという(驚いた顔に関しては有意な差は見られなかった)。次に被験者らに別の写真を見せ、時間を置いた後にその内容を思い出すよう指示したところ、こちらも鼻呼吸をしながら記憶した方が、正答率が高かったという。
実験から明らかになったように、たとえ意識的に匂いを嗅いでいなくても、鼻呼吸は情動や記憶に影響を与えている。鼻呼吸を「脳の遠隔操作」とみることもできるだろう。
■鼻呼吸にはメリットだらけ
呼吸と脳の関係は今回の研究のみならず、脳科学の分野で盛んに研究されており、先行研究では、瞑想が及ぼす身体への効能も実証されている。
2011年に米ハーバード大学の研究者らが行った研究では、呼吸を重視する瞑想が記憶や感情に関わる灰白質を再建する働きを持つことが判明している。被験者に27分間のマインドフルネス・エクササイズをするよう指示したところ、たった2カ月で記憶力などが強化されたそうだ。
また、ハーバード・メディカル・スクールのハーバート・ベンソン博士らが行った2015年の研究でも、ストレスにより引き起こされるといわれている、大腸の運動や分泌機能の異常で起こる病気「過敏性腸症候群(IBS)」が瞑想により緩和すると報告されている。
2009年に発表されたカリフォルニア大学の研究に至っては、瞑想や呼吸の調整により寿命まで延びる可能性が指摘されている。というのも、適切な呼吸は、寿命や若返りの鍵を握ると近年注目されている「テロメア」を長くするからだという。トカナでも度々報じてきたように、老化現象は細胞分裂に伴いテロメアが短くなってしまうことに起因すると言われている。
正しい呼吸、特に鼻呼吸が脳や体に絶大な影響力を持っていることは以上の研究成果から明らかだろう。一方、口呼吸は顔つきまで大きく変えてしまうと言われており、あまりメリットは無さそうだ。普段は無意識に呼吸しているため、なかなか気付きにくいが、これを機に自分の呼吸法を一度確かめてみては如何だろうか?
(編集部)
※イメージ画像は、「Thinkstock」より
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