日刊ゲンダイ 2015年2月22日
エンタメ最前線】
日本映画界の至宝といっていい、高倉健さんが亡くなって4カ月近くが経った。驚きはいまだに彼に関する話題が至るところで続いていること。健さんの影響力には計り知れないものがある。
先週から池袋の新文芸坐で始まった東映作品の追悼上映も満席状態になっているという。ヤクザ映画以前に出演し、青年サラリーマン役を演じた「万年太郎と姐御社員」や「東京丸の内」。
さらに、金田一耕助を演じた「悪魔の手毬唄」や、ギャングものの「恋と太陽とギャング」など、めったに上映されることのない作品に、とくに人気が集まっているそうだ。上映は28日まで。
NHKのBSプレミアムも先週から追悼放送を始めた。「網走番外地」「緋牡丹博徒 花札勝負」「昭和残侠伝 死んで貰います」などが並んでいてうれしい。公共放送で、ヤクザ映画が放送されたことの意味も大きい。
スポーツ紙も連載を続けている。日刊スポーツの“健さんを探して”で「昭和残侠伝」などを一緒に作ってきた吉田達プロデューサーが、鶴田浩二とのちょっとした確執や、深作欣二監督とはソリが合わなかったことなどを“暴露”していて興味深い。
雑誌でも、2月末発売の月刊誌「一個人」が“高倉健VS菅原文太 やくざ映画名作対決”と銘打った特集を行う。東映ヤクザ映画が、なぜ出てきたのか。2人の魅力は何かなど“フカボリ”的な内容が盛りだくさんである。
これらすべて、健さんの魅力のなせるわざとはいえ、甚大かつ広範囲な影響力と持続力には、本当に恐れ入る。多くの日本人の心の中にいつまでも居続ける俳優が健さんだと言える。
(映画ジャーナリスト・大高宏雄)