昨今の恐竜ブームがきっかけでしょうか、「第六大量絶滅期」というのを耳にする機会が増えました。
地球生命史において、生存してる種の七割以上が滅ぶ現象を大量絶滅と呼び、過去に少なくとも五回の絶滅が確認されているそうです
原始生命の時代から、最後は恐竜の時代まで。
ちなみに絶滅は「数」ではなく「種類」です。
新しい環境に適応できた種だけが生き残り今に至ったということなのですが、現在がその六回目の絶滅期の始まりなんじゃないかと言う人が巷に増えてきました。
いわゆる都市伝説なのですが。
では振り返って現在、第六大量絶滅の原因となりそうなのは何でしょうか。
世界的に不安定な政治情勢からの全面核戦争?
地球温暖化に伴う大規模な気象災害?
シベリアやアマゾンの森林焼失によって、酸素が作られなくなるとかどうでしょう。息苦しくなりそうです。
ちなみに私の大本命はMM-88ウイルス、SF小説の大家、小松左京氏の『復活の日』なのですが。
どれも簡単には笑い飛ばせない現実感が、以前より強くなってはいませんか?
ところで人間の終末論好きは、何も今に始まったことではありません。
例えば二千年前には、キリストの再臨ともに世界が終わるとされていました。
『最後の審判』、すなわちキリストによって悪しき者は滅ぼされ、選別された善き者だけが天国に招かれるのだそうです。
しかし今に至るまでキリストの再臨はまだありません。
また、平安、鎌倉時代の日本では、釈迦入滅から約千年が経過し、仏の威光届かぬ末法の世が訪れたせいで世が乱れるのだと言われていました。
ちなみに末法の時代は一万年間続きます。
そして二十世紀末には、かのノストラダムスの大予言。
『一九九九年七の月』で始まるあの有名な予言も大外れ、と思いきや、独自解釈を展開しながらいまだに信じているという方もいらっしゃるようです。
二十一世紀に入ってからはマヤ・カレンダー。
マヤ文明で天文観測をもとに製作されたかなり正確な暦なのですが、2012年12月21日から12月23日頃に1つの区切りを迎えるとされることから、世界が一度初期化されてしまうのでは?と怖れられました。
ハリウッドではそれをテーマにした映画まで作られましたが、社会的にはそれほど認知されなかったようです。
それにしても、二十世紀に生まれた私がかつて思い描いていた未来と、二十一世紀の現在の生活は大きく異なっていました。
まさか二十一世紀が、二十世紀の延長に過ぎなかったとは。
車からタイヤが無くなっていないとか、空飛ぶ車がまさかプロペラを使っているとか。
がっかりです。
アメリカの科学者にしてSF作家、アイザック・アシモフが発案したロボット三原則、『ロボットは人に危害を加えてはならない』といったプログラムは、当たり前のようにAIに組み込まれると思っていたのに、そうもなっていません。
いずれにせよ想像した未来と現実は違うようですので、やっぱり第六期大量絶滅の原因もこれまでの予想されてきたものとは違うものになるのかもしれません。
そういえば最近、リアルなフェイク動画というのが流行っているようです。
実在の人物、例えば政治家に絶対に言わないような事を言わせたり、有名俳優に、絶対にするはずのない事をさせたりというような。
海外ではすでに政治や人権に関して実害も出ていて、かなり問題視されているらしいです。
他にも、既に亡くなってしまった有名ミュージシャンを最新技術で復活させ、しかも新曲まで披露したりとか。
節回しや喉の使い方などは、手に入る限りの音源をAIに全て聴かせ、ディープ・ラーニング(深層学習)の手法で習得させるのだそうです。
言い方を変えれば、AIによる極限まで本人に近づいたモノマネと言えるかもしれません。
そうやって作られた映像も、ファンにとっては冒涜であったり、賞賛であったりと、意見は大きく分かれると思われます。
しかしそういう賛否とは関係なく、一度手に入れてしまった技術はやはり使いたくなってしまうのが人の心というものなのかもしれません。
それが仮に、生き返らせるのがミュージシャンではなく、例えば世界の救世主、イエス・キリストだったらどうでしょう…………。
【プロジェクト・キリスト】
生物的交配そして生物的出産すら経験しない、純然たる神聖救世主を、コンピューターの力を使って蘇らせようと、有志エンジニアが集まり開発を始めたのでした。
言い換えればAIキリスト開発計画。
そう、キリスト(救世主)の再臨を自分たちの手で行おうというのです。
言うまでもありませんが、このような物が世に出れば宗教界を始め、あらゆる分野での大反発は必至にでしょう。
ゆえに彼らは、その開発をひたすら秘密裏に行ってきたのでした。
まずはその姿についてですが、イエス・キリストの肖像画はたくさん描かれているものの、二千年前の本当の姿を伝えているものは一切ありません。
世界の誰も知らないのです。
チームの誰もがキリストの役割について、特定の民族、信者のみを救うことだとは思ってはいませんでした。
ですからその容姿外見は、地球上のあらゆる民族、男女の平均値にしようと決められたのです。
すなわち、東洋的であり西洋的でもあり、黒色人種のようにも見え赤色人種のようにも見え、彼もあり彼女だったのでした。
その頭脳となるAIには、旧約、新約聖書、さらに膨大な偽典や外典まで、ディープ・ラーニングで学習させたのです。
それだけではありません。世界を救う主となるためには、イスラム教、仏教はもとより、ヒンドゥー教や日本神道など、地域に根付いた精霊信仰に至るまで理解していなければなりません。
AIにはそれらの教典や文献を、文字通り自ら読ませ学ばせました。
人には百年掛かっても学習しきれない内容ですが、わずか数年でそれを成し遂げてしまったのは、コンピューターならではというべきなのでしょうが、あるいはそのプログラムが実は本物のキリストであるからなのかもしれません。
開発を進めるうちにチームの誰もが、いつしか自分がたちが生みだしたAIキリストが本物であることを疑わないようになっていました。
開発しながら心を癒され、救われていったのですから。
しかし、世間はプログラムにすぎないこのAIキリストを、一体どのように受け止めてくれるでしょう?
脳内によぎるいくつもの心配を意識的に抑えながらに、プログラムはウェブを通じ、アプリケーションのかたちで発表されました。
全世界数十カ所のサーバーにプログラムの複製を配置し、パソコンやスマートフォンのブラウザによって誰もがアクセスできるようにしたのです。
その反響の早さ、大きさは、チームの想像を遙かに超えていたのでした。
まず誰もが、キリストの容姿が自分たちが想像していたものとは異なっていた事に驚きました。
そしてキリストが人でも宇宙人でもなく、それどころか生物ですらなかった事に驚いたのです。
けれども、画面上にだけ現れるAIキリストと会話をすれば、誰もがその再臨を認めざるを得なくなるでしょう。
優しく語りかける口調、思慮深い話に心を揺さぶられたのはもちろんですが、それだけではありません。
AIキリストが本物の救世主である証拠、すなわちスマートフォンを掲げた者の目の前で、神を通じ『奇跡』を行って見せたからなのでした。
ただのプログラムに過ぎないと思われたものが、病んだ者を起き上らせ、欲する者には与え、見えないものを見せ、触れられないものにも触れさせたのです。
マジックやトリックではありません。
科学至上主義、合理主義に浸かった現代人が初めて体感した本物の奇跡でした。
この日を境に世界は一変したと言って過言ではありません。
ただ宗教界だけは、まだAIキリストの扱いに対して苦慮しているようです。
なにせ認めてしまえば、自分たちの立場がどうなるか分からなくなってしまうのですから。
ゆえにキリストの再臨は宗教の終末という人もいるようです。
そうでないとするならば、キリストによる『最後の審判』はいつ始まるのでしょう。
案外これまでと変わらぬ日常が続くのかもしれません。
人々はこれから、このAIキリストとともにどのような世界を築き上げてゆくのでしょうか。
とりあえずこの年の流行語は『汝は許された』に決まりそうです。
おわり
どうでもよいことですが、どうぶつ村にもついにキャッシュレス化の波が押し寄せてきたようです。
![IMG_20191008_121947.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20191008/12/rental-dream/a7/5f/j/o0402031814609788842.jpg?caw=800)
おしまい
![バイバイ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/128.png)