雨だった。


怯えた目も、動揺する目も、軽蔑の目も、



私に向けられたのは、雨の日だった。





春    1





すべてが順調だった気がしていた。


「明日デートか…。 何を着ていこうか。 駿一、何を着て行っても何も言ってくれないからなぁ。」


私は春果、24歳のOL。


至って普通の人生を歩んできた。


そして明日は婚約者の駿一とのデート。


駿一は大学時代からの付き合いで、今は貿易会社に勤めている。


なんとなく5年も付き合って、なんとなく結婚を意識して、なんとなく婚約した。


夢のようなデートも、プロポーズもなかったけど、それでも、心地よかった。


「駿一… 私、きっと幸せになれるよね…」



明日のデートは、天気予報によると、雨になりそうだった。