淡いミントグリーンのワンピースに、誕生石のピアス、ヌードベージュのパンプス。

全部デートの為に新しく購入したもの。

ヘアスタイルは気合を入れて編みこんでみた。


今日をずっと楽しみにしてきた。

なのに、どうして、こんなに雨が降っているの!




春  2



「雨…か。まあ、なんとなくそんな気がしたよ。雨カップルだもんね。」


早めに待ち合わせ場所に着いた私は、ぽつりとつぶやいた。


思えば駿一とのデートは、いつも雨…いや、9割くらい雨だった気がする。

大体傘が手放せなくて、手をつなぐことがほとんど出来ずにいた。


「傘はさすがに、気合入れてこなかったなぁ。」


普通の、すこし錆が入りつつあるビニール傘を眺めて、ため息をついた。



「駿一、遅いな…いつもはこんなに遅れないのに。」


気が付けば約束の時間を10分過ぎている。

いつもなら遅れることはないし、遅れたとしても必ず連絡を入れるはずなのに。


「電話してみようかな。えっと、ケータイ…」


春果が携帯電話を探そうとした瞬間、突然雷鳴が鳴り響いた。



「きゃっ…!!」


あまりの鋭い音に、春果は思わず持っていたバッグを地面に落としてしまっていた。


「あーあ、バッグが…」







「落としましたよ」









「ありがとうござ……」






その瞬間。
春果は忘れてしまっていた記憶を取り戻した。

同じ雨の日、同じように出会ってしまった、彼のことを…