半月 | ひより軒・恋愛茶漬け

半月


   よるこい
  


月が出ている。


あなたは

あかりを消して

ざざ、と

大きくカーテンを開く。


下限の月はこわい。

泣きそうな目に見える。


ここなら


だれにも見えないと

あなたは言うけど

わたしはそれを

信じられない。


やわらかい光をあびて

あなたが

がらがら、と

窓をあけるから


なまあたたかい風に乗って

いっきに

街の音が入ってくる。


ひとつひとつ

判別できない

ごちゃごちゃした

ソトの音と一緒になって


あなたは

わたしのとなり

薄い上掛けのなかに

もぐりこむ。


それから

両腕をついて

わたしの

上になって


薄明かり


半分の月みたいに

うかぶ

半分の

あなたの微笑み。


わたしは、どう見えるの?

きっとひどく

みっともないはずだ。


あなたが触れると

音楽でも

言葉でもないもので

わたしの中が満たされていく。


解かれない手首。

あなたにはさわれない。


誰にもきこえないとは

信じられなくて

わたしは唇をかんで

声を殺す。


輪郭を

ひとつに。


ゆるやかに

とけて。






月を見上げる。


月の目になってわたしを見る。


(写真は半月がなくて満月です)