星座 | ひより軒・恋愛茶漬け

星座

  波音

助手席で目覚めると

波の音がした。


冬の夜の

暗い空の


風が冷たい。


ケイがもう先に

車から降りて

せっせと

荷物を降ろしている。


暖かいアルコールと

暖かい寝袋。


ただふたりで

今夜

星を見るための。


ごめん、ケイ。

寝ちゃったみたい。


ケイは

いつものように

笑っている。


早く手伝えよ、と

笑いながら怒る。


ケイと私は

一度も

喧嘩したことがない。


だってケイは

大切な

トモダチだから。


誰も来ない

静かな入り江の

砂の上で


ひとつの寝袋に

もぐりこむ

私たち。


仰向けに横たわる

ふたりの上に

降るような星の光が

注がれる。


無言で並ぶ

ふたつの

からだ。


波音にゆすられて

呼吸する

ふたつの

たましい。


空にのぼっていく

白い息をみながら

恋とは違う優しさが

私を包む。


ああ、

きっと私たちは

むかし

兄妹だったに違いない。


あの星座をかたちづくる

星のように

永遠に

同じ距離で


ここに

この世界に

ありつづける。


ゆるやかに暖まる

お互いの体温を

感じながら


唇さえ触れ合わず

心から安らいで


こんなにも

近く

寄り添っている。





冬は星がきれいです。

街の中でも星座を辿ることはできるけど

波の音を聞きながら

星を眺めたいなぁ、と思うのです。


冬の海は

寒がりの私には、かなりツライですが。