もう一枚の写真は、最も奇妙なものでした。その人物の年齢がまったくわかりません。頭は少し白髪が混じっているようです。その人物は、ひどく汚れた部屋（部屋の壁が三か所ほど崩れているのが、写真にはっきりと写っている）の片隅で、小さな火鉢に両手をかざして座っています。そして、今回は笑っていません。表情がまったくありません。まるで、座って火鉢に両手をかざしたまま自然に死んでいるかのようで、非常に不気味で不吉な雰囲気のする写真でした。
奇妙なのは、それだけではありません。その写真には、顔がわりと大きく写っていたので、私はその顔の造りをじっくりと調べることができました。しかし、額も平凡、額の皺も平凡、眉も平凡、目も平凡、鼻も口も顎もすべて平凡で、何も特徴がないのです。この写真を見て目を閉じると、もうその顔を忘れてしまいます。部屋の壁や小さな火鉢は思い出せるのに、その部屋の主人公の顔の印象はすっと霧のように消えてしまい、どうしても思い出せません。絵にならない顔なのです。漫画にも何にもならない顔です。目を開けてその写真を再び見ても、やはり思い出せません。そして、ただただ不愉快でイライラして、つい目をそむけたくなります。
いわゆる「死相」というものにも、もっと何か表情や印象があるものでしょうに、この顔にはそれすらありません。人間の体に馬の首でもくっつけたような、そんな感じがします。とにかく、どこというわけではないのですが、見る者をぞっとさせ、不快な気持ちにさせます。私はこれまでに、このような不思議な男の顔を見たことは、一度もありませんでした。