シャワーに問題がある。注意書きによれば、24時間お湯が出るのは、平壌や金剛山などのホテルだけ。他の地方のホテルでは、朝と夕方の特定の時間だけしかお湯が出ないし、全く出ないケースもあるという。北朝鮮ではよく、電熱棒(投げ込み式ヒーター)を使って風呂を沸かすことがあるが、電気が来ない場合も覚悟しなければならない。

 

 

 

「ホテルやその他の施設にはWi-Fiネットワークはありません」。ホテルにはインターネットに接続されたパソコンがあり、1週間前に申し込めば使えるという。  ただ、メールはホテルのアカウントからしか送受信できない。メールの受信は無料だが、送信する場合は1本あたり2.2ドル(約330円)かかり、容量が大きい添付ファイルがあると追加料金も取られる。北朝鮮はローミングサービスがないため、SIMカードを購入しないと通話もできない。195分の通話が可能だが、120ドル(約1万8000円)もするSIMカードを購入しても、北朝鮮市民の携帯に電話はかけられない。

 

「外国人観光客は移動の自由がありません。ガイドなしでホテルを離れることは、決してお勧めしません」。私も2006年7月に平壌の高麗ホテルに宿泊したことがある。数百メートル離れた平壌駅まで散歩したいと頼むと、案内員がやはり同行した。国家安全保衛部(現国家保衛省、秘密警察)出身の脱北者によれば、北朝鮮市民は見慣れない人物が街を歩いているのを見かけた場合、必ず、近くの分駐所(交番)に報告する義務を負っている。脱北者は「同じアジア系でも、服装や所持品、歩き方で外部の人間かどうかはすぐわかる」と話す。

 

食事はどうだろうか。注意書きはツアー客を安心させるような文句が並ぶ。「食べ物の質はほぼ許容範囲です。食事の基本は伝統的な韓国料理になります。ビビンバ、平壌風冷麺、プルコギ、キムチ、イカ・タコ料理など」。確かに、1990年代に大量の餓死者を出した苦難の行軍時代に比べれば、食事状況はかなり改善している。高額のツアー料金(4~5月のツアーの場合、4泊5日で750ドル=約11万2000円=)を支払っている以上、それほど食事には不自由しないかもしれない。

 ただ、注意書きには「ベジタリアン用のメニューはありません」という記述もある。乳製品なども楽しめないかもしれない。ロシア人の口に合うようなメニューも難しい。注意書きは「ナッツ、チョコレートバーなどの軽食を持参して、食生活を多様化し、北朝鮮での長い旅を過ごすことをお勧めします」と訴えている。

 

8歳の息子のためのお土産を探した。北朝鮮にあったお土産は「主体(チュチェ)の原理」という小さなパンフレット、北朝鮮の国旗が描かれたバッジ、「アメリカは邪悪だ」というプロパガンダが書き込まれた絵はがきなど、政治の匂いがするものばかりだった。  息子のためにプラモデルを探したが、弾道ミサイルや戦車など、軍事兵器ばかりだった。ようやく、見つけたのがデンマーク製の「レゴブロック」そっくりのデザインの箱に入ったオモチャだった。箱には朝鮮語で「組み立て式オモチャ」と書かれ、宇宙ロケットの絵が描かれていた。サンクトペテルブルクに戻り、息子と一緒に組み立てたが、説明書が雑なうえに、ブロックの質が悪くて、完成に手間取ったという。