ぼくは一時のきまぐれで、マルグリットが約束したと思った。

夜の11時がやってきて、ぼくはマルグリッド宅を訪問した。

「今晩は」

「あら、あなたなの?」と気のない返事だった。

「今晩来るようにおっしゃったじゃありませんか」

「そうだったわね。つい忘れてしまってたわ」

「お邪魔なら、帰ります」

「お帰りにならなくていいのよ。ただ体の加減がちょっと悪いだけ」

ぼくはマルグリッドの寝室に入った。

直後に、最近マルグリッドに恋焦がれている

若い伯爵がたずねてきたが、体の具合が悪いと

帰らせて、メイドに家の戸締りをさせて、

メイドも帰してしまった。

「さっきはあんな機嫌の悪い顔をしてごめんなさい」

「ぼくは、なんだってあなたなら許しますよ」

「じゃ、わたしを愛してくださる?」

「気が狂うほどに」

「いけない女でも?」

「全部うけいれます」

「誓ってね」

「約束します」

翌朝、パトロンの公爵が
毎朝やってくるというので
ぼくは朝の五時に家を出た。