コラム 落語名演音源二八 

 二十三席目

    三遊亭鳳楽「なめる」

    日本コロンビア株式会社から発売のCD「談志が選んだ艶噺し その十五 川柳川柳「青春エロばなし」 三遊亭鳳楽「なめる」」(COCJ-30898)より

 何年か前、「七代目・円生は誰が継ぐ?」というような洒落のふりして(たぶん半分は)本気のイベントがあったように思うのだが、それが円丈と現在の六代目円楽(※1)、そしてこの鳳楽によって争われたものだったように思う(違ってたらごめんなさい。訂正のコメントを下さい)。円丈師と鳳楽師が絡むなら面白いかも、と思った。
 鳳楽さん。このCDでは、最初から「艶笑噺」と指定された会の録音で、マクラでそれなりに下世話な小話をやっている。だが、同じく収録されている、彼から見るとかつての叔父貴分でもある川柳師の噺とくらべると、ずいぶん品がいいことは明らかだ。とはいえ、断っておくが、私は川柳師も好きなのだが。
 この鳳楽師。先代の円楽師の弟子でありながら、そのライバルの志ん朝師の声を彷彿とさせるところがあり、面白い。例の真打ち騒動でも円生師のお気に入りだったというが、宜なるかなという色気と品がある。
「なめる」は、円生師の音源でも聴いたことがあるが、私は鳳楽師も遜色ないと思う。
 ある芝居小屋で偶然出会った職人と大家の娘。娘の家に誘い込まれ、結婚を出汁に、娘のお乳の下で腐敗臭を放つ大きな腫れ物をなめされられる職人。彼は翌朝、意気揚々と昨夜引き留められた家を訪ねるのだが…。
 やりようによってはグロテスクで後味の悪い噺だが、鳳楽師の語りは、そう感じさせない清潔さを持つ。 

         藤谷蓮次郎
                           二○二二年二月十四日


 ※1  本文で書いている「七代目・円生」をめぐるやり取りは、鳳楽、円丈の両師匠に加えて、当代円楽師ではなく、六代目の直弟子・円窓師によって争われたものです。したがって、本文の内容は、私の勘違いでした。お詫びして、訂正いたします。

 2022年2月22日 藤谷・追記